「本当にあった」に学ぶ、トレッキングの撤退ラインとは? 突然の落石「北穂高岳登山」
想定外の危険要素が接近してくる!
北穂から涸沢岳にかけては、意外と難所が続くパート。この付近では北穂と南岳の間の「大キレット」が難所として知られていますが、ルートファインディングなども考慮するとこちらの方が難しい部分もあります。 アップダウンが激しく、岩場を登ったり下ったり。鎖が設置されているところもたくさんあります。 ガスがかかったり晴れたりを繰り返しているのですが、遠くの方で、落石の音が何度も起きていました。しかも、どんどん近づいてくる感じ。よく見えないのだけど、いったい何が起きている? かなり人数の多いパーティが向こうからやってくるようです。その人達が、歩き方が下手なのかなんなのか、やたらと落石を起こしているもよう。ヤバい…… コルに降りる手前で見ていたのですが、彼らの下に位置するのは、かなりリスクが高い。あれだけ雑に歩く人たちだから、狭いところですれ違うのもヤバい。周囲を見回して、なんとか安全にすれ違えそうな場所を探して、そこで待機することに。 9月も下旬の3000m、じっとしているとかなり寒いのですが、なんとかみつけた安全そうな場所で待機するしかありません。震えながら、小一時間ほど待ちました。かなり大人数のパーティで、どうやら海外からのツアー客のようでした。 偶然見つけた安全地帯で、トラブルもなくすれ違うことができて、ほっと一息。陽気というかのんきというか、明るく挨拶もしてくださったのですが、こちらはけっこう表情が引きつってたかも……。 なんとか無事に白出コルにある穂高岳山荘に到着したのですが、想定より1時間押し。時間的には、上高地まで行けなくはないのですが、人気コースだし、また混雑に遭うかもと思うと気が重い。連休明けなのにこんなに人が多いとは…… とりあえず小屋でコーヒーを飲みながら、地図を広げてしばし一人で作戦会議です。気がせいてはろくなことがない。吊尾根だって、けっして気を抜いて歩けるコースではありません。マイナーコースで、あまり通る人のいない、白出沢を下ることにしました。 上部はガラガラの岩が累積する急な谷ですが、下半分は樹林帯。コースタイム約6時間で新穂高温泉へ下れます。このコースは、過去に何度か通ったことがあるので、土地勘はあります。無事に下山することができました。