地球へ落下した小惑星「2024 BX1」(Sar2736)を落下前に観測成功! 観測史上8例目
発見直後から、JPL(ジェット推進研究所)の「Scout」、ESA(欧州宇宙機関)の「Meerkat」、小惑星センターの内部警報システムなど、各宇宙機関の小惑星監視システムが地球への衝突を予測しました。衝突予想日時は初観測から2時間45分後となる翌21日0時33分(中央ヨーロッパ時間同日1時33分)であり、ドイツの首都ベルリンの西部にあるネウハウゼン(Nennhausen)周辺に落下することが予測されました。 2024 BX1の見た目の明るさは発見時でわずか約18等級、最も明るい時でも約13等級しかありませんでしたが、実に13箇所の天文台が2024 BX1の明るさや位置の観測記録を報告しました。観測は21日0時18分まで行われましたが、これは地球に衝突するわずか15分前です。そして、2024 BX1は事前の予測通りの場所・時刻に落下し、ドイツ西部を中心に各地で火球が観測されました。 小惑星センターによって2024 BX1という正式な仮符号が与えられたのは、落下から約1時間後の1時41分に発行された小惑星電子回報によってでした。同時に公転軌道も確定され、地球に衝突するまでは太陽の周りを約1.54年周期で公転するアポロ群小惑星であることが分かりました。
■将来的には頻繁な出来事になるかもしれない?
2024 BX1の推定直径は約1mであり、これは発見された小惑星(および天体)の中でも最小クラスの大きさです。この大きさにも関わらず詳細な観測が行われたのは、地球に接近したという条件面だけでなく、観測体制や技術精度の改善が背景として挙げられます。 実際、2024 BX1の観測記録は、初発見から最後の観測までの約2時間半の間に198回に達しました。今回と同じく、約11か月前にヨーロッパ地域に落下した2023 CX1の場合、約6時間半の間に434回の観測記録があり、どちらのケースもほぼ1分に1回以上の観測記録があったことになります。いつ見つかるのかわからない小惑星に対し、短時間で観測体制を整えられることが、今回の珍しい観測に繋がったと言えます。 2024 BX1と同等の直径約1mの小惑星の落下は “もしかすると地表に隕石を残すかもしれない” 程度の、危険性のないイベントです。ただし、将来的にはチェリャビンスク州での災害に匹敵するか、それを上回るような隕石災害が起こるかもしれません。観測が困難な小惑星の観測体制の向上は、このような稀ながらも危険性の高いイベントが起こるかどうかの予測精度の向上につながります。今回の2024 BX1のような事前に予測された火球イベントは、将来的にはこのような記事が書かれないほどに頻繁なイベントとなるかもしれません。 ※1月27日追記:1月26日に、2024 BX1に由来すると思われる隕石を発見したとの報告がありました。確認された場合、落下前に宇宙空間で発見された小惑星に由来するものとしては4例目の隕石となります。 Source Minor Planet Electronic Circular. “MPEC 2024-B76 : 2024 BX1” (Minor Planet Center) “"Pseudo-MPEC" for Sar2736”. (Project Pluto) “JPL Horizonsでの計算結果”. M. Martin. “Report 423r”. (International Meteor Organization) “Krisztián Sárneczky氏のX (旧Twitter)でのポスト” “Richard Moissl氏のX (旧Twitter)でのポスト” “Denis Vida氏のX (旧Twitter)でのポスト” “ブカレスト天文台での観測画像” (Șonka Adrian – Astronomie)
彩恵りり