「プロ志望届“出す・出さない”なぜ揺れた?」大社高ドラフトに密着、藤原佑は指名されず…記者が見た「名前が呼ばれない空気」「響く“じゃがりこ”の音」
今夏の甲子園で93年ぶりに8強に進出し、話題を集めた大社高。同校からプロ志望届を提出していた「1番・中堅手」藤原佑は、10月24日のドラフト会議で指名漏れに終わった。当日を密着した記者が見た「藤原佑の進路が決まるまで」。〈全2回の1回目〉 【現地の様子】ドラフト当日の大社「藤原佑の名前が呼ばれず…」「“じゃがりこ”の音が響く」石飛監督が登場して会見に…現場の雰囲気を一気に見る
ドラフト当日、大社の会議室の様子
10月24日当日、島根県立大社高校の校舎の一角にある会議室には、複数の報道陣が待機していた。地元の民放テレビが3局、新聞も地元紙を中心に4社。私を含め、10人ほどの人間がドラフト指名の瞬間に備えて在室していた。 大社といえば、今夏の甲子園で93年ぶりに8強に進出し、大きな話題をさらったチームである。校舎には、戦いぶりに感銘を受けたファンから寄贈されたという、「夢と感動をありがとう!」と書かれた横断幕が掲げられ、玄関口には、大会中の新聞記事が掲示されている。 それだけでなく、正門近くで畑仕事をしていた男性曰く、観光客がタクシーで乗り付け、正門で記念撮影を行うのが“日常風景”と化しているそうだ。さながら、出雲市内のちょっとした観光スポットである。 ようやく厳しい残暑が過ぎ、朝晩は季節相応の肌寒さを感じるようになった10月下旬でも、大社の学校周辺には、夏の空気が残っていた。 「大社旋風」と称された夏の躍進の一翼を担ったのが、「1番・中堅手」として出場した藤原佑である。50メートル走は5秒8、チーム関係者が計測した一塁駆け抜けのベストタイムは3秒6。俊足とされるプロの左打者が記録するタイムを、右打席から記録する規格外の韋駄天で、夏の島根大会、甲子園の全10試合を通じて記録した盗塁は16に上る。
プロ志望届を出す・出さない…揺れた理由
その藤原が、9月9日にプロ志望届を提出した。実は、志望届を提出するまで、藤原の進路情報は錯そうしていた。 まず神村学園に敗れた夏の甲子園準々決勝の終了直後には、「プロ志望届を出すつもりです」という趣旨の発言が、複数のメディアから報じられた。だが、島根に帰郷してすぐに受けた取材では、一転「出さないつもりです」とのコメント。二転三転した理由について、藤原はドラフト前の取材で苦笑しつつ、こう明かしていた。 「指名がなかった場合にお世話になるかもしれないチームと相談を進めていたこともあって、どこまで話していいかわからなかったんです。それで、一旦は『出しません』と言った方がいいんじゃないかなと。自分の中では、野球が好きで、プロに行きたい思いは一度もブレていないです」 志望届提出後には、プロ球団が獲得を検討している選手に返送を求める「調査書」も受け取った。
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