「お金パッとくれる人でラッキー」紀州のドン・ファン事件 『毎月100万円』『性交渉なし』など条件に結婚 元妻が赤裸々に供述…「野﨑さんが覚醒剤の購入を依頼」密売人との接触認める【被告人質問詳報・前編】
“旦那にバレるから早くして” の意図とは…
そして須藤被告は午前0時頃、日付が変わる時間帯に、田辺市内のコンビニ近くで密売人(10月1日の公判に証人として出廷)と落ち合った。被告が10万円を入れた封筒を手渡すと、密売人も封筒を渡してきたという。 弁護人「コンビニは野﨑さん宅から歩いて何分ぐらい?」 被告 「5分ぐらいです」 弁護人「急いでいた?」 被告 「そういう意味で急いでいるのではなくて。社長は(午後)8時に寝るから、自分が家を出ても気づきもしないので。“旦那にバレるから早くして”というのは、私が作った設定なんですけど、(仮に待ち合わせについて)“12時をすぎると外が出るのが怖い”と言っても、“そんなナメた理由で急ぐのか?”と売人から言われるのもイヤだった。だから、“旦那にバレるのがイヤだから急いで”という設定」 弁護人が訊ねたわけではなかったが、密売人への証人尋問でも焦点となった“野﨑さんにバレないように早く渡して”と求めた点について、須藤被告は饒舌に語った。 被告 「『若いな、20歳か?』と訊かれたから、うんうんとうなずいて、(本当は)22歳だったけど、それで話を進めていって。『旦那いるんやろ?』うんうんと。『注射器いらない』という話をしたら、『あぶりで使うんか?』と言ってきた」 被告は当時「あぶり」(覚醒剤をアルミ箔に載せるなどして火であぶって、煙を吸う)という方法は知らなかったというが、その質問にも適当に肯定する返事をして、密売人と別れたという。このあたりは密売人の法廷での証言とも合致する。 筆者としては、“注射器は不要”と密売人に伝えたと、被告自ら明らかにした点が、印象に残った。
“野﨑さんが「あれは使い物にならん、ニセモノや」”
密売人と別れた後は…。 被告 「封筒の中からティッシュのかたまりを出して見たら、ビニール袋に透明な結晶があるのを見て、おーっと思ってすぐに戻しました」 弁護人「封筒はその後どうした?」 被告 「社長は寝ていたので、(4月8日の)夕方ぐらいに渡しました」 弁護人「野﨑さんは何と?」 被告 「『ありがとうございます』と言っていました」 弁護人「その後、野﨑さんに変化は?」 被告 「なかったです。翌日(4月9日)の夕食の時に、『あれは使い物にならん、ニセモノや』『お前にはもう頼まん』と言われました」 つまり須藤被告としては、「覚醒剤の密売人と接触し、“白い結晶状のもの”を購入した点は認めるが、それが本物の覚醒剤だったかは疑わしい」という主張である。 確かに、10月1日に証人出廷した密売人=被告に直接封筒を手渡した男性は「覚醒剤は本物だった」と証言した一方、11月7日に証人出廷した密売人=被告と電話でやり取りをした男性は、「実際は氷砂糖だった」と法廷で証言した。後者とは符合することにはなる…。 被告曰く、その後は野﨑さんと覚醒剤についてやり取りすることはなかったという。約1週間後の4月13日にも「覚醒剤 死亡」「殺す」という検索履歴、野﨑さん死亡後の6月3日にも「覚醒剤 入手ルート」「覚醒剤 検挙率」という検索履歴が、それぞれ確認されているが、被告は前述と同様に、“検索欄に候補として出てきたものをクリックしただけ”と説明した。 法廷で繰り広げられた、表面上は矛盾のない説明。被告は真実を語っているのか、それとも稀代の “ストーリーテラー” なのか…。被告人質問の焦点は、野﨑さんが亡くなった当日へと移っていく。(後編に続く) (MBS報道センター 松本陸・大里奈々)