グリップが大切なレース用タイヤは溝なしのツルツル! だったら市販車のタイヤの溝は何で必要?
タイヤの溝には「排水」という役割が与えられている
F1やスーパーGTなどのレース中継の番組を見ていると、レース車両が装着しているタイヤが妙にツルツルしていることが気になったという人は少なくないでしょう。 【写真】なんの意味が!? タイヤの横にある「黄色」や「赤色」の点とは タイヤというと、カー用品店やガソリンスタンドで陳列されているのを見てもいろんなパターンの溝が入っているのがふつうです。それに対してレースの現場で使われている専用のタイヤはまったく溝が無く、溝がある姿に慣れている側からしたらちょっと不思議な姿に感じます。 同じタイヤなハズなのに、レース用のタイヤはまったく溝がなくてあんなに速く走れているのに、市販のタイヤは溝が減って「スリップサイン」が出ると危ないとか車検にとおらないとか、うるさいくらいにいわれるのは何が違うのでしょうか。 ここではそのタイヤの溝にフォーカスを当てて少しだけ掘り下げてみたいと思います。
そもそもタイヤの溝って何のためにあるの?
ずばり、タイヤの溝のいちばん重要な役割は「排水」するためです。 ふだんクルマに乗っていると、雨の日に運転しなければならないことはそれなりにあるでしょう。雨が激しくなってくると、捌ききれなくなった水がアスファルトの上に水たまりになって溜まっていることもよく見掛けます。 水というのはサラサラの液体ですが、瞬間的な当たりに対してはけっこう硬くなって耐える振る舞いをすることは知っているでしょうか? プールなどで水面を叩くとけっこう硬い感触になるのを経験したことがある人もいるでしょう。 あの振る舞いが、路面に溜まった水とタイヤの間で起きていると想像してみてください。タイヤが水たまりに差しかかると、水面にタイヤが当たった瞬間に、水は一瞬耐える振る舞いをします。そうなると、それまではアスファルトの凸凹とタイヤの弾力でグリップ力が生まれていたのに、間に水の膜が入ってしまうとグリップ力が失われてしまいます。 ただそれは一瞬の話なので、間の水の膜が押し出されればまたアスファルトとタイヤが接してグリップが戻るのですが。速度が高くなってくると、水を押し出す前にタイヤが転がって先の水の膜に乗ってしまう状態になります。それが「ハイドロプレーニング現象」というもので、これが発生すると、スッとグリップが失われてハンドルも効かなくなり、とてもキケンです。 タイヤの溝は、その間に挟まった水の膜を排出するために刻まれているのです。とくにトレッド面(接地面)の真ん中付近にぐるっと真っ直ぐに彫られた溝は排水に対して重要な役割を持っています。そしてその両脇に掘られた溝は、タイヤの転がる方向に対して、中央から両脇に向けて効果的に排出するように配置されているものが多いようです。 この溝は、水を接地面の外に排出する役割とともにいったん溝のなかに水を溜める働きもあるので、タイヤが減って溝が浅くなるとその働きが不十分になってしまうんです。そのため、減りの限界を示す「スリップサイン」が設けられて、機能の限界を知らせてくれているというわけです。