パックご飯を米国輸出「今後は2倍、3倍に」アイリスオーヤマ・大山健太郎会長インタビュー
アイリスオーヤマが好調な食品事業で、生産拠点の拡大や輸出強化に乗り出している。今年1月に米国向けパックご飯の輸出を始め、7月には西日本向けの生産やアジアへの輸出拠点として、鳥栖工場(佐賀県)で食品生産を開始した。2023年12月期の食品事業の売上高は、前期比約21%増の290億円を計上。24年はさらに伸ばし、430億円を見込む。事業の好調要因や輸出拡大の狙いを大山健太郎会長に聞いた。(経済部・庄子鉄平) 【写真】鳥栖工場のパックご飯の製造ライン(アイリスオーヤマ提供) [おおやま・けんたろう]大阪府立布施高卒。1964年、大山ブロー工業所代表者。91年の社名変更でアイリスオーヤマ社長、2018年7月に会長。仙台経済同友会終身幹事、日本ニュービジネス協議会連合会副会長、東北経済連合会副会長も務める。79歳。大阪府出身。 -食品事業が好調だ。 「コロナ禍のサプライチェーン(供給網)の混乱や地政学リスクにより、投資を国内に回帰させてきたことが大きく影響している。22年の総投資額245億円のうち、海外は90億円、国内は155億円だったが、24年は総投資額235億円の全てが国内向けだった。飲料水とパックご飯の生産能力を高めるため、大半の210億円を食品事業に投資した」 「1月の能登半島地震、8月の南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)発表による防災意識の高まりや(新米が出回るまでの)コメの品薄で需要が増えたことも要因の一つだろう」 -パックご飯など食品の輸出を強化する狙いは。 「米国向けパックご飯でいうと、近年の和食ブームで、料理に合う日本のパックご飯の認知度が高まっている。当社も現地で試食会を開いており、今後は2倍、3倍と売上高が伸びる市場と捉えている」 「キッコーマン(千葉県)がしょうゆ文化を世界に広げたように、アイリスもパックご飯の文化を海外で根付かせたい。さらに、今後は日本国内で好調なペットボトル入りの飲料水を東南アジア諸国連合(ASEAN)向けに輸出する」 -アイリスの全事業の中で食品事業はどういう位置付けか。 「収益の柱となる家電事業はコロナ禍で2年間やや低迷した。食品事業はまだ規模が小さいものの、成長が著しい分野で家電事業を補う可能性がある。食品事業の構成比をこれまでより大幅に引き上げたい。積極的な投資を続け、顧客のニーズに応えていくことが重要だ」 -食品事業を担う社会的意義をどう考えるか。 「東日本大震災後の13年に精米事業を始めたきっかけは、震災復興や災害への備えだった。震災時は店の商品棚から食品や飲料水が一気に消えた。能登半島地震の際もアイリスの飲料水は需要が伸びた。毎年、どこかで大きな地震が起きるし、台風も必ず来ている」 「当社は防災グッズでも国内最大の品ぞろえを誇っている。防災事業で培ったノウハウを生かしながら、食品事業でも国民の意識向上に貢献できればいい」
河北新報