“ミスタードラゴンズ”立浪和義の中日監督起用から「ネームバリューで選んではいけない」と断言する、江本孟紀の考察
立浪監督はどうだったか…?
そこで立浪監督である。果たして彼はどうだっただろうか? 高校時代から結果を残して騒がれ、高卒1年目からいきなりプロの世界で活躍した。周囲の人間だってほっておかないだろうし、気がつけば取り巻きのような人間が出てきたって不思議ではない。 そうして惜しまれつつも引退し、機が熟して機運が高まった頃にいざ監督になったものの、すべての歯車がかみ合わないまま、1年が過ぎ、2年が過ぎ、とうとう3年目になっても思うような成果を上げることができなかった……というところだ。 だからこそ、球団フロントは「現役時代の人気や実力」だけで、監督を判断してはいけない。 現役時代の知名度や成績と、監督になる資質はまったく異なるものである。二軍で朝から晩まで練習に付き合う指導者のほうが、よっぽど信用できる。ドラゴンズに限らず、どの球団にも言えることだが、そうしたことを肝に銘じて監督の人選を行ってほしいものである。
ファンの声に左右されない球団経営を
今の時代、インターネットやSNSなどでファンが発する声というのは目に見えてしまう。聞こえるのではなく「見える」のだ。実はこれが厄介なのである。 応援しているチームが負ける。それがネットのニュースに出て、ファンがコメントを寄せるわけだが、目に余るような内容のものが、数えきれないほどあふれている。 徐々に負けが込みだして優勝はおろか、Aクラスを確保するのさえ困難になってくると、当初は非難めいた文章だったものが、明らかな誹謗中傷へと変わっていく。 これでもかとばかり過激なコメントがたて続けに出てくると、個人攻撃どころか、まるでリンチをしているかのようである。 ファンにしてみれば、「問題を提起した」と思っているのだろうが、相手から名指しで指摘された人にしてみれば、そんなふうには一切考えていない。 こうした声が今、プロ野球の監督に集中してしまうのだから、たまったものではない。 立浪監督の監督生活3年間のなかで、2023年からの2年間はまさにこんな状況だった。怨恨が、今度は球団側へと向かっていく。 「いつまで監督に据えているんだ」 「本当に勝ちたかったら、監督を交代させろ」 「負け続きの野球はもう見たくない。早いところ首脳陣を刷新しろ」 だいたいこんなところだろうが、球団としてはやらなければいけないことがある。それは、チームに負けが込んでいるとき、どういった考えでその監督を起用しているのか、明確なビジョンを示すということだ。