新型日産ノートオーラオーテックは、多面的に楽しめる“小さな高級車”だった
マイナーチェンジを受けた日産「ノートオーラ」に、新しく設定された「オーテック」にサトータケシが試乗した。日産モータースポーツ&カスタマイズが手がける、最新カスタムカーの魅力を考える。 【写真を見る】新型ノートオーラオーテックの専用装備など(15枚)
イメージカラーは茅ヶ崎の海の“青”
“NISSAN”“NOTE”“AURA”“AUTECH”“e-POWER”と、このクルマのテールゲートには4つのバッヂが貼られていて、なかなか情報量が多い。 日産ノートオーラは、ハイブリッドのコンパクトカーである日産「ノート」の内外装を上質に仕立てたプレミアムコンパクト。オーテックとは、“プレミアムスポーティ”というコンセプトで日産車の内外装をカスタマイズするブランド。そしてe-POWERとはエンジンで発電、その電気でモーターを駆動する日産のハイブリッドシステムだ。 日産ノートオーラが6月にマイナーチェンジを受けて、主にフロントマスクが変更された。この新しいノートオーラをベースに、オーテックが内外装に手をくわえたのが本日の試乗車ということになる。 オーテックは湘南発祥のブランドであり、茅ヶ崎の海の“青”がイメージカラー。したがって、シートやステアリングホイールのステッチなどにブルーが使われ、LEDのポジションランプには波の模様があしらわれている。 専用のアルミホイールやエアロパーツなどは標準モデルよりギラッとした雰囲気であるけれど、でもやり過ぎてはいないという微妙なバランスを保っている。 もともと日産ノートオーラのインテリアは、シンプルで機能的であると同時に質感も高く、好感を持っていた。そこにオーテックの手が入ったことで、“小さな高級車”感が増した。
600~800万円級のクルマと遜色ない出来
内外装の設えも興味深いけれど、より感銘を受けたのは、このクルマの走りだった。 まずe-POWERというパワートレインの滑らかさと力強さに感心する。1.2リッターの直列3気筒ガソリンエンジンは発電に専念して、駆動力はモーターの担当になるけれど、「ホントにエンジンまわっているの?」と、疑いたくなるほど、静かで振動がない。 ドライブモードを「SPORT」にシフトするとアクセルペダルへの反応は素晴らしく鋭くなり、まさに胸のすくような加速を見せてくれる。 自動車や内燃機関の教科書には、エンジンという機械は極低回転では力を発揮しないし、高回転までブン回すと効率が悪くなる、とある。いっぽうで、効率のいい領域で一定の回転数をキープすると、すこぶる高効率だともある。ということは、エンジンを発電機として使うのは、理にかなっているのかもしれない。 足まわりは、優秀なパワートレインに見合ったもので、路面からの突き上げを上手にいなす乗り心地と、コーナーで踏ん張りながら思い描いたラインをトレースする正確なハンドリングがバランスしている。 現行の日産ノートオーラが登場した2020年にも乗っているはずだけれど、それほど印象には残っていない。「こんなにいいクルマだったけ?」と。己の不明を恥じる。あるいは日々熟成を重ね、今年のマイチェンでさらに洗練されたのかもしれないけれど、完全に見逃していた。 試乗車にはプロパイロットも装備されていて、高速走行時には加減速とハンドル操作をアシストしてくれる。 追従走行の精度は日々進化しているようで、スムーズでレスポンスに優れるモーター駆動ということもあって、ノートオーラは先行車両の加減速に滑らかについて行く。ステアリングホイールのスポーク部分でぽんぽんと操作できる、インターフェイスも良好だ。 “ハンドル支援”をオンにしたときのステアリングホイールに伝わる反力だけはもう少しナチュラルにしてほしいけれど、それ以外は600~800万円級のクルマと遜色ない出来だ。 クルマの楽しみ方はいろいろあるけれど、最先端の科学技術にふれる楽しみというのもある。このクルマは、電動パワートレインや半自動運転と呼びたくなる運転支援装置で、ここまで進化したのかということを体験できる。飛行機や宇宙船の技術に接するのはなかなかにハードルが高いけれど、このクルマだったら気軽に新しい技術を知ることができる。 もうひとつ、自分の好みに仕立てるというのもクルマの楽しみで、このクルマの場合はオーテックがさまざまなパーツを用意している。 というわけで、操る楽しみや最新技術を知る喜び、カスタマイズする楽しさなど、このクルマは多面的に楽しむことができる。筆者のようなクルマおたくこそ見逃しがちかもしれないけれど、「これでいい」じゃなくて、「これがいい!」で、選ぶ国産実用車の有力候補だろう。ガレージにこのクルマと、ちょっと古いスポーツカーやSUVがあったりすると、理想のペアだ。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)