水没した激レアキットカーを再生! アニメを意識して令和カスタムできたのはベースがVW「ビートル」だったから!?
レストアが必要な状態の不動車だった
こうした想いが通じたのか、就職のため引っ越した先のカーショップで、偶然にもパーヴィス ユーレカを発見。まさに運命的な出会いに感動したものの、車両の傷みは激しく、レストアが必要な状態の不動車だった。そのため購入可能かどうかを確認してみたところ、先客がいて、レストランに展示するためのオブジェとして話が進んでいるところだった。 しかしどうしても手に入れたいという強い思いが伝わり、なんとか譲ってもらえることになった。その提示された販売価格はというと、現状売りで160万円ほど。修復前提で考えていたため、むしろその金額は思っていた以上に安くお買い得と感じて即購入を決めた。ついに憧れ続けたパーヴィス ユーレカを手に入れることができたのだ。 それからというもの修復の日々が続く。クルマ好きである父にも協力してもらい、経験豊富な的確なアドバイスをもらいながら修復がスタート。よくよく調べてみると水没車であることがわかり、エンジン、トランスミッションはもちろん、あらゆる部品が使い物にならない状態だった。 もともとがキットカーであるパーヴィス ユーレカは、空冷のフォルクスワーゲン「タイプ1(ビートル)」をベースに製作されている。そのため、機能系部品も国内流通のリプロパーツ、あるいはリビルトパーツを使うことができたのが幸いだった。ただ、その修復箇所はとても多く、走行できるようになるまでの道のりは果てしなく長かったそうだ。
近未来カーに生まれ変わる
“りゅうちゃん”さんは修復の過程で、このクルマをさらにイジッて「近未来カー」として作り込むことにした。キットカーの特殊性を活かすべく施したボディリメイクは、パーヴィス ユーレカのラインを残しつつ、ワイドフェンダー化させ、さらにウイングも独自に作り込み、よりレーシーなデザインに仕上げた。モチーフにしたのは子どもの頃に観ていた『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』というアニメだった。 また、コクピットを覗くと、インテリアもきっちり作り込んでいる。アナログ感を打ち消すべくモニターやプッシュボタンを設置して、さらにそれを収めるコンソールも現車に合わせて製作している。 このクルマに乗り込むときにはキャノピー・ドアを持ち上げ、体を滑り込ませる。この一連の動作をもっとカッコよく演出するために、手動式からリモコンを使用した電動オープンスタイルに変更した。ドアを開けるときは電動で、閉めるときは手動に設定。コスト削減・トラブル防止の意味もあるが、垂直ドアを閉めるアナログ的な動作があった方が気分が盛りあがる、というのも理由になっている。 パーヴィス ユーレカは、“りゅうちゃん”さんの手によってまさに唯一無二のスーパーカーに生まれ変わった。しかも国内仕様として令和のカスタムを施し、ドリームマシンとして。ここから先、彼の情熱の結晶であるマシンは、その進化を止めることなく時代に合わせて歩んでいくことだろう。
青木邦敏(AOKI Kunitoshi)