住宅ローンで1,500万円以上節約も、借金交渉AIボットで信用スコアを改善 生成AIフィンテックが変える金融分野の交渉・営業
AIで借金交渉を支援するCambio
上記は住宅ローンの事例であるが、高いクレジットスコアは、自動車ローンやクレジットカードの優遇利率、保険料の低下につながることがあり、生涯で享受できる恩恵はかなり大きなものとなる。このため、いかにクレジットスコアを改善できるのかというのは、多くの米国民の関心ごとになっている。 AI活用によってクレジットスコアの改善を支援しているのが2021年設立の米フィンテックスタートアップCambioだ。 もともとネオバンクとして設立された同社だが、多くのユーザーがクレジットスコア改善を目的に同社のサービスを利用していることが判明、2022年に事業の方向を転換し、クレジットスコア改善に焦点を当てたサービスの提供を開始した。サービスはスマホアプリとして利用できるもので、当初はフリーミアムモデルだったが、ペイドモデルに移行し、現在では9万人近いユーザーが利用しているという。 目玉機能の1つはChatGPTを活用したリアルタイムのアドバイス機能。ユーザーが債権者と借金の交渉をする際、ChatGPTがその通話内容を聞き取り、リアルタイムにアドバイスを生成する機能だ。 ユーザーの債務状況などを考慮して、債権者にどのような情報を伝えればよいのかアドバイスすることができる。たとえば、ユーザーが債権者に連絡を取る際の効果的なオープニングステートメントの提案、また債権者が納得する可能性のある返済プランの提案、債務減額の提案などが可能だ。 またCambioはAIを使って直接債権者との交渉を代行するサービスも行っている。このサービスは、まずユーザーから委任状を取得し、それを基にAIが債権者に電話をかけ、借金減額交渉や借金完済のための交渉をサポートする。 Cambioは、AIによる交渉サービスを利用したユーザーの70%が交渉60日以内にクレジットスコアが改善したと報告している。
銀行・信用組合による営業AIコール
一般消費者向けにクレジットスコア改善を支援するAIシステムを開発してきたCambioだが、最近その技術やノウハウを銀行や信用組合向けに応用する新しい取り組みを開始した。この取り組みを始めるにあたりCambioはAI子会Aviaryを設立、同子会社を通じて、金融機関向けの営業AIボットの開発を進めている。 Aviaryの営業AIボットは、金融機関の営業に特化しており、電話による金融商品の販売を遂行することができる。 たとえばEncourage Financial Networkは、「Debt Protection」商品の電話販売でAviaryの営業AIボットを導入し、営業の自動化を加速中だ。 Debt Protectionとは、債務者が予期しない事態(失業、病気、死亡など)によって返済が困難になった場合、ローン残高の返済や一定期間の支払い免除・延期を可能にする保護プランで、保険のような金融商品。複雑な商品であるが、Aviaryの営業AIボットは自然かつシンプルな言葉で見込み客に説明し、リードを獲得することができるという。 また、カードのアクティベーションでもAviaryの営業AIボットが活用されている。クレジットカード会社Envisionは、クレジットカード口座を開設したものの、カードをアクティベートしない利用者が多く、また営業もアクティベーションまで手が回らない状況であることを鑑み、Aviaryの営業AIボットを導入した。 営業ボットは、カード口座を開設した顧客に電話をかけ、アクティベーション状況を確認、アクティベーションされていない場合、シンプルなステップで実行できることを伝え、アクティベーションを促進している。このほか銀行などがクロスセルしたい場合などでも十分に活用できるという。