海の上で進む、地球環境対応の実態。ヤマハ、ホンダ、スズキのアプローチは?
ホンダからは小型エンジン船外機に代わってすぐに実用できるパワーユニット
ホンダも水上で使うための電動化ユニットを展示している。 ヤマハが理想的将来への提言であるのに対し、ホンダはより現実的に目前の対策を見据えた電動化の取り組みが対照的だ。 かつて創業者の本田宗一郎氏が「水上を走るもの、水を汚すべからず」と述べ、船外機のエンジンも当時主流の2ストロークでなく4ストロークを主に発展してきたホンダだが、より「汚すべからず」実現のため、船外機の電動化も進めている。 展示される小型電動推進機は、既存の4ストロークエンジンをモーター+コントロールユニットに置き換えただけで実用可能となったコンセプトモデル。だが、すでに島根県松江城での観光船での実証実験を一区切り終え、同地で利用者によるリース運用へと一歩進めたのも大きな成果となっている。 それを実現したのひとつが「ホンダ・モバイルパワーパックe」の採用。バッテリーパックと充電ユニットとセットで、松江城観光船の船着き場に設置することで、船頭さん自身が一日2回の装着、充電の交換作業を行うことで、誰もが使える電動船が実用化したのだ。ちなみに現状では2個のバッテリーパックで4時間程度の遊覧船運行ができているという。 また、モバイルパワーパックeは発売中の電動スクーター「EM1 e:」にも使用でき、これを展示することでこれからの電動モビリティの可能性を大きく広げることを示唆する出展となった。
スズキはマイクロプラスチックへの対応を提案
スズキもマリンでの環境対策を提案している。 興味深いのが生態系への悪影響を及ぼすとされているマイクロプラスチックの回収というテーマ。 一般に海上を走る船のエンジン冷却はその場の海水を用いるが、海水を汲み上げ冷却に用いて海へと放水する途中にフィルターを通すことで海へ流出してしまったマイクロプラスチックを回収しようというもの。 2022年7月生産の船外機の一部へ標準装備することで、気付かないうちに環境への対応ができてしまうというわけだ。 展示されていたのは、実際に回収に使用されたそのフィルターとプラスチック。目に見えなくはないが、広い海原で人間が回収するには大変な作業であることが感じられる。 自然と共存するには、汚してしまったものを綺麗にしながら使っていくことがひとつの解であることを感じさせる展示であった。
小林和久