ボコ・ハラムがISに忠誠 「イスラム国」はアフリカにも広がる? 国際政治学者・六辻彰二
アル・カイダとは関係悪化へ
しかし、いわばそれぞれの利害関係によるISとボコ・ハラムの同盟の成立で、ISの勢力がアフリカに一気に広がるかは疑問です。これまで、欧米諸国はシリアとイラクに関心が向かっているだけでなく、「ナイジェリア軍による人権侵害」がネックとなって、ナイジェリアなどに軍事援助をほとんど行ってきませんでした。ISの傘下に収まったことで、ボコ・ハラムはこれまで以上に欧米諸国の警戒を呼ぶことになります。 それに加えて、ISに忠誠を誓ったことで、ボコ・ハラムはAQIMなどアル・カイダ系組織との関係悪化にも直面せざるを得ません。ISに忠誠を誓ったメッセージのなかで、シェカウはアル・カイダ指導者のザワヒリ容疑者の「幸運を祈る」と述べましたが、これは「円満退社」を印象づけたいものとみられます。しかし、イスラム過激派の世界では、ISとアル・カイダのように、それまで協力関係にあったもの同士が、方針の違いから戦火を交えることは珍しくありません。 これらに鑑みると、ボコ・ハラムを傘下に収めたISが、アフリカで一気に勢力を広げるかは不透明といえるのです。
------------------------------------------------------ ■六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者。博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、幅広く国際政治を分析。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、東京女子大学などで教鞭をとる。著書に『世界の独裁者』(幻冬社)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『対立からわかる! 最新世界情勢』(成美堂出版)。その他、論文多数。Yahoo! ニュース個人オーサー。個人ウェブサイト