フランス人だって休日出勤する? それでも歴然と存在する「日本の職場との差」
夜遅くまでの残業や休日出勤...ブラックな働き方が慢性化している日本の企業は少なくありません。それに対してバカンスを長くとり、しっかり休むイメージのある「フランスの職場」。その実態とは? 前田康二郎さんが、日本にも長く在住した経験を持つフランス人夫妻、パスカル・フロリさんとセドリック・フロリさんに学んだ働き方について書籍『改定新版 自分らしくはたらく手帳』よりご紹介します。 「管理職の罰ゲーム化」が加速する日本の職場...その原因とは? ※本稿は、パスカル・フロリ、セドリック・フロリ、前田康二郎著『改定新版 自分らしくはたらく手帳』(クロスメディア・パブリッシング)を一部抜粋・編集したものです。
労働生産性の差は 「心配性の差」?
日本はよく労働生産性が低いと言われていますが、実際は本当にそうなんだろうか? と思います。いろいろな職場を拝見していても、どの職場も仕事のやり方に工夫をしていますし、効率的な仕事ぶりだなあと思うことが多々あります。しかし、実際に統計上では他国よりも生産性が低いと言われます。 この差はなんなのだろうと思いながらフロリさん夫妻と話をしていると、日本は「存在しない仕事」のための待機時間が長いからなのではないか、という結論に至りました。たとえば、自分の仕事は終わっているのに、定時では帰りづらい、ということがあります。そうすると、他国ではそのような習慣はないところが多いので、その分、「統計上は」労働生産性が落ちます。 ではこのことが会社にとって利益を押し下げる悪いことなのかというと、簡単にはそう言い切れません。 日本はチームプロジェクトが多いですから、「万が一、担当者にトラブルやミスがあったら、誰かがケアしないといけない」ということがあります。確かに自分の仕事が終わっているときは「どうして帰ってはいけないの?」と思うでしょうが、反対の立場だったらどうでしょう。 みんなが「お先に」と帰ってしまって、1人ポツンと取り残されてしまったら、不安になることもあるでしょう。実際に何かトラブルになったとき、サポートできる誰かがいた方が安心なのは確かなのです。 諸外国では雇用の契約時に膨大な条件が示された契約書を交わすこともあります。そこには、日本人が見たら「こんなことまで決めておくの?」とびっくりするような細かい事項までが記されています。それは、後からトラブルが起こったとき、訴訟になるのを防ぐためです。 業務と責任がはっきり区別されている外国と違って、日本はそれがあいまいな分、グレーゾーンの業務や時間が多いのかもしれません。しかし、昨今問題になっているように、残業時間に関してはきちんと管理する必要があります。 Il faut qu'une porte soit ouverte ou fermée. ドアは開けられるか閉められるかせねばならぬ そのためには、まず私たち1人ひとりが「自立」「自律」しなければなりません。自分の業務やトラブルの可能性を正しく把握して、「私は大丈夫なので、みなさん先に帰って大丈夫ですよ」と本人が言ってくれないと、周囲の人たちは帰りにくいでしょう。 そして周囲が安心して「本当? じゃあ今日はお先に」と言えるのは、「この人が大丈夫と言ったら大丈夫なんだな」と信頼している場合だけです。上司や同僚、部下、みんなそれぞれが自分の業務をマネジメントする実力を持ち得ていないと、お互いに帰れない。日本人は心配性なのです。