「紫外線を浴びる」「ウイルスに感染する」「熱い風呂に入る」…「疲労」は「脳」が感じさせる「危機反応モード」だった
一説によると、「疲れる」は「憑かれる」、つまり何者かに取り憑かれて身体が重くなることに由来するという。憑き物を落とすために必要なコツ―最新研究からそれが次々と明らかになってきた。 【一覧】えっ、あれも…飲んでも効かない「サプリ」はこちら 前編記事『なんと「日本人の8割は疲れている」「元気な人が年々減っている」...世界で最も進んだ日本の「疲労研究」で分かったヤバすぎる「日本人の疲労感」』より続く。
紫外線が疲れさせる
さて、前編で触れた2つ目の「精神的な疲労」とは、仕事や家族などの人間関係に思い悩んだり、創作・芸術活動のために精神を集中させるときに感じる疲れのことだ。渡辺氏が解説した疲労のメカニズムが、脳細胞で起きているのである。 興味深いことに、肉体と精神の両方を同時に疲れさせる要因もある。たとえば強い紫外線だ。 地上に届く紫外線にはA波とB波の2種類があり、たるみやシワの原因となるA波が、5月には年間を通して最も大量に降り注いでいる。紫外線は、皮膚や筋肉の細胞にダメージを与えるだけではない。 「近年の研究では、紫外線のA波が眼の中にある視神経を介して、脳細胞の免疫システムを反応させ、活性酸素が生じることで、疲労を引き起こしていることが示されました」(渡辺氏) 炎天下に長時間いることで、この二重の疲労に襲われる可能性がある。
ヘルペスウイルスも原因となる
さらに、体内に寄生したウイルスが疲労の原因となっていることも明らかになってきた。 「新型コロナウイルスの後遺症やインフルエンザにかかったときに身体がだるく、動くのがつらいケースなどが感染性の疲労です」(渡辺氏) 東京慈恵会医科大学教授の近藤一博氏の最新研究によると、うつ病とは「究極的な疲労」であり、それは体内に潜むヘルペスウイルスが引き起こしていることがわかってきた。 今後も疲労についての探究は尽きることなく進んでゆくだろう。 ここまで見てきたさまざまな疲労が、私たちの体内では複合的に起きるのだが、その根本を辿っていくと、「脳」に行き着くという。 東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏が語る。 「たとえば、運動すると心拍数や血圧が上昇します。これは、運動の負荷で全身の酸素需要が高まっても決して酸素不足に陥らないよう、脳が心臓や末梢血管に酸素供給を高める指令を発するから。 運動時の発汗も、脳温度の上昇を抑えるために脳が汗腺に指令を出しているからです。つまり、身体を使った運動時に最も疲れるのは、各器官に指令を出し続ける脳そのものなのです」 散歩しているとき、どれくらいの速さで足を動かし、手を振るのか。どこの筋肉をどう動かすのかを最終的に指令するのもすべて脳だ。生命活動は脳が統御していることからして、すべての疲労は「脳」が原因だったのである。