営業成績が貼り出され自分の収入が社内でダダ漏れ状態…トップセールスが会社を辞めたいと言った納得の理由
■本人のキャリア希望をよく聞く そうならないように、どういう経験やスキルを身に付けたいのかをよく聞き、それにまつわる仕事に優先的に関わらせることです。 すぐに本人が望む仕事を任せることができない場合は、担当してもらう仕事が将来望む仕事にどのようにつながるのか、それがどのようなキャリア形成につながるのかを説明したうえで任せることが重要です。 その説明の際に、事例を話せると説得力が増します。 当初は望む仕事をさせてもらえず、下積みの仕事を担当させられたが、その後、望む仕事を担当させてもらうことができ、その中で下積みの経験が大いに役立っている。 そんな自身の経験や他の社員の事例を話せれば、納得してもらいやすくなります。 これらの説明もなく、本人の希望しない仕事を一方的に担当させ、「ここにいても必要なキャリアを築けない」と思われてしまうと、離職に向けて動き始めます。 また、「若手にハードに仕事をさせると辞めてしまう」というイメージから、このカテゴリーの人の仕事の負担を軽くした結果、「もっと厳しい環境で自分を鍛えたい」「仕事の仕方がぬるい」「残業させてもらえないのがつらい」という理由で離職する人もいます。 20代、30代の方はプライベートを大事にしたいから残業したくない、業務量はほどほどにしてほしいという方が多いですが、このカテゴリーの人は、たくさん業務をこなして早く力をつけたいという方も少なくありません。 そのため、希望する業務量について、個別に確認しておく必要があります。 ■意欲や能力が高くても、人間関係のストレスに弱い人も また、仕事への意欲や能力は高いものの、人間関係のストレスに弱い人もいます。 そういう人は仕事にやりがいを感じても、給料が高くても、人間関係にストレスを感じると耐えられずに離職します。
■人間関係がつらいから辞めたいという女性 ある不動産会社では、ベテラン営業マンが数多くいる中、20代の女性社員が常時TOP3に入る営業成績を残します。ところがその女性から退職の申し出がありました。 驚いた社長が理由を聞くと、給料は売上に比例する歩合制で、営業成績は社内に貼り出され、周りの社員は自分がいくらもらっているかがわかる。それがやっかみとなっている。営業は楽しいが、人間関係がつらい。だから辞めたいとのこと。 「じゃ、給料はだいぶ下がるけど、一般職員と同じ固定給にして営業成績を貼り出すのをやめようか」と社長が言うと「いいんですか? だったら辞めません」と言われ、社長も「え⁉ 本当にいいの?」と唖然としたといいます。 彼女の営業成績だと、歩合給から固定給に変えると給料が4分の1ほどになってしまう。でもやっかみをもたれるよりは給料が4分の1になったほうがいいと言う。それで固定給にしたところ、意欲的に営業に取り組んでくれているとのことです。 この話に驚かれる方も多いかと思いますが、彼女にとっては高い給料をもらうことより、人間関係のストレスなく働けることのほうが重要なのです。 ここまで極端な例ではないにしろ、同じような話は他でも聞きます。こういったところからも、人間関係でストレスを感じたくないというニーズの強さを感じます。 仕事への意欲や能力は高い、でも人間関係のストレスには弱い。 そういう人には人間関係のストレスをなるべく感じない状況を確保し、意欲的に長く働いてもらいましょう。 ■部下の育成を放棄しない このカテゴリーの人の中には、最初からキャリアアップの転職をするつもりで入社してくる人もいます。 そういう人は入社と同時に転職サイトに登録し、今の会社ではこれ以上必要な経験やスキルは得られないと判断すると転職します。 そういう人でも、これまでお伝えしてきた関わりを行うことで、自社に強い魅力を感じてもらえれば転職を防ぐことはできます。 ただ、それがうまくいかない場合は転職を食い止めることが難しくなります。 こういった転職によって部下が辞め、育成にかけた時間が無駄になることを繰り返し経験すると、その上司は次に新人が入っても「どうせあなたもすぐ辞めるんでしょ」と指導に消極的になり、それによってまた新人が離職する負の連鎖に陥ることがあります。 その点に留意して、部下の離職を繰り返し経験しても、部下の指導が疎かにならないように心がけてください。 と、こうやって書くのは簡単ですが、これはいざやるとなると大変なことです。 これが売り手市場におけるマネジメントのつらさです。 今、多くの会社でこういったことが起き、現場の上司は悪戦苦闘を強いられています。しかし、結局最後に勝つのは、それでも諦めずに部下と関わり、部下を定着させ、育てることができた会社です。 ですので、つらいのはよくわかりますが、ここが肝心なところだと意識してください。そこでさじを投げると、会社の成長とご自身の上司としての成長は止まるのです。