シンガーソングライター灯橙あかが語る、歌うことで見つけた「拠りどころ」
声色を使い分ける理由
声色を使い分ける理由 ―「今夜、死にたいと思った。だから、歌いたいと願った。」は、イントロからAメロ、そしてサビへの各展開にハッとさせられます。これは、コード進行もそうなんですけど、灯橙さんの声色の使い分けによるものなのかなと思いました。Aメロは可愛い女の子っぽい感じなんですけど、サビでハキハキとしたかっこいい感じになります。 ありがとうございます。まさにそのイメージですね。今回に限らず、私の曲には「僕」と歌う曲もあれば「私」と歌う曲もあって、作るときにどんな人が歌っているのかをイメージしているんです。だから声色も変わってくるのかなと思います。 ―この曲を歌うのに最適な誰かを作り上げるわけですね。 年齢とか、見た目もなんとなくイメージします。でも、しっかりイメージしすぎないようにはしてます。なんというか、強すぎるんですよね。聴く人が想像を広げられたほうがいいと思うので。 ―今回はどんなイメージだったんですか? 作ったときは主人公のあかりちゃんのイメージで、年齢も中学生~高校生くらいでした。でも、この曲で歌っている感情って、10代の人だけが持っているものではなく、歳を重ねるにつれて深まっていったり、育っていくものだと思ったので、もう少し上の年齢の女の人というイメージもつけ加えました。 ―そういう自分のなかでのモデルがいるのといないのでは、全然違うものですか? う~ん、というか、いなかったことがないんですよね。昔からそうなんです。でも、最初は表現しきれなかった気がする。今もまだまだですけど。 ―レコーディングのことについてです。今回からアレンジャーに安部潤さんを招いて行なわれたとお聞きしました。まずは安部さんにデモを渡すところから始まると思うんですけど、どういう状態で渡したんですか? ギターで弾き語りしたものを渡しました。展開も、最後の転調からアウトロまでの構成を全部自分で考えたものです。ただ、録音はバンドなので、どんな楽器を使って、どんなフレーズにするかなどは安部さんにお任せしています。 ―「最終的にこういうアレンジになったらいいな」というのを安部さんに伝えるんですか。 はい。いろんな曲を聴いて、どれがいちばんイメージに近いかというのを考えました。最終的には5曲くらい、「この曲のこの部分」っていうふうに細かくお伝えしました。 ―プレイヤーの方々にリクエストを出すことはあるんですか? ギターに関しては、流して弾くのか、刻んで弾くのかみたいなところはけっこう私からも意見を出して、試行錯誤していただきました。 ―シンセが前に出るセクションが多いですけど、メロごとに曲調がガラッと変わるので、合わせ方が難しいのかなと思いました。 そうですね。実は、最初にできあがったシンセのアレンジは「平和すぎる感じ」がしたんです。たとえばAメロはちょっとコードが明るめなので、そこにさらに明るめのシンセが鳴ってしまうと、やりすぎ感が出ちゃうんです。そこのバランスに気をつけて、安部さんといろいろ探っていきました。 ―なるほど。そういった面でも曲のテーマみたいなものが強調されていると知ると、より聴くときに深みが増しますよね。そう考えると、MVもいろんな場面で撮影されたシーンがありますが、ご自分で考えたものなんですか? ビデオは昔からお世話になっている大阪の監督さんがいるんですけど、今回も一緒に話し合って構成を決めていきました。実は、最後の海のシーンは、当初の絵コンテの段階ではなかったんです。 ―海のシーンは、けっこう辺りも暗くなってますよね。撮影的にも最後だったんですか? はい。絵コンテどおりに撮っていったんですけど、「必死感」が足りないなと思ったんです。すがるような感情、というか。それで最後に、近くに海があるから入って撮ろう、となったんです。あそこがなかったら、MVとしてイマイチだったかなと思います。 ―ジャケットもあのシーンの写真ですよね。 「今夜、死にたいと思った。だから、歌いたいと願った。」ジャケット画像 そうですね。曲のテーマでもあるんですけど、なにかにすがるような、自分の拠りどころみたいなものを表現したかったんです。うまくいかないことがあっても「これさえあれば大丈夫」っていう。私が感じた小説のテーマにも合っているし、なにより私にとっても歌というのは大切な拠りどころなので。 ―ありがとうございます。最後に、ミュージシャンとしての今後の展望を教えてください。 去年まではコロナ禍でYouTubeなどネット中心だったけれど、今年からはライブで皆さんに歌をお届けする機会をいただけるようになってきました。そんな経験を重ねていくなかで、直接歌を届けることの大事さを強く感じてきました。会場の規模も少しずつ広げていって、ライブで魅せられるミュージシャンになっていきたいです。 ―具体的に立ちたい場所はありますか? あの~、ZEPP。ZEPPは行ったことがあるんですけど、あそこに立ちたいです。まだ遠いなとは思いますけど。 ―ZEPPといっても何カ所かあると思うんですが……(笑)。 ……すみません、どこかは考えておきます(笑)! <リリース情報> 灯橙あか 「今夜、死にたいと思った。だから、歌いたいと願った。」 配信中 <ライブ情報> バンド形式のワンマンライヴ『あのバス停で春を待つ』 2024年1月13日(日)渋谷 DUO music exchange Official HP:
Satoru Tsukada