高齢者も障害者も楽しめる登山を 「山の日」で国際フォーラム
今年初めて迎える国民の祝日「山の日」(8月11日)を前に10日、北アルプスを望む長野県松本市で「誰もが山で楽しめる環境づくりを進めよう」と国際フォーラムがあり、国内外の関係者が参加しました。誰でも支障なく施設などを利用できるユニバーサルデザインと同様に、障害者や高齢者、子どもや外国人が登山や山遊びを楽しむための障壁をなくす工夫を話し合いました。 【写真】多発する冬山遭難 遭難は「出発前」の自宅から始まっている?
バリアフリー化などの工夫を意見交換
フォーラムは全国「山の日」協議会、長野県、松本市などでつくる実行委員会がこの日から2日間松本市、上高地で開催する第一回「山の日」記念全国大会の一環。山好きの女優、工藤夕貴さんと山と渓谷社編集長、萩原浩司さんの司会で「山岳ユニバーサルツーリズムの推進」をテーマに、山岳国スイスやアメリカ、イギリス両国の大使館職員らも参加しました。 基調講演で秋山哲男・中央大教授(日本福祉のまちづくり学会会長)が、ノンステップバスや障害者用のエレベーターの緊急ボタンなどの開発例を紹介。食べやすい食品の工夫やタクシードライバーへの教育、バスと鉄道のホームを共有することによる移動の負担の軽減など、ユニバーサル・デザインの分野は多岐にわたると指摘。山岳ユニバーサルツーリズムにも多くのヒントを与えることを示しました。 事例報告では、障害者が自然を楽しむための支援とサポートをしている団体、ata allianceの中岡亜希代表が、支援する人の手や障害者の行動を広げる機材の大切さなどを写真を交えて説明しました。 英国大使館のグレッグ・マルハーン参事官は「イギリスに高山はないが、登山への関心は高い。国民には山岳地帯を散歩する伝統もあり、全国にはフットパス(森や街並みを楽しみながら歩く小道)が縦横に走っている。古い道は1000年前のものもある」と独自の“歩く文化”を紹介。「そうした環境はバリアフリーで利用できるよう取り組んでおり、障害者でも誰でも利用できる」と話し、「東京オリンピックも予定されており、東京などのバリアフリー化に向けても連携していきたい」と提案しました。 また、米国大使館のアロン・ゴールド経済担当二等書記官は「山岳ユニバーサルツーリズムの取り組みは興味深い。アメリカには多くの素晴らしい山岳があるが、国立公園では誰でも手軽に景観などを楽しめる工夫がされており、手話通訳の依頼に応えることもできる。障害者向けのスキーも用意してある。それも差別を禁じたアメリカ障害者法があるためだ」と実情を語りました。