モスクワ・テロ事件の背景にある「SCOの近年の動き」
戦略科学者の中川コージが3月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。モスクワ郊外のコンサート会場で起きたテロ事件について解説した。
モスクワ・テロ事件、タジキスタン出身の容疑者4人を拘束
モスクワ郊外のコンサート会場で多数の死傷者が出た襲撃事件で、モスクワの裁判所は実行犯とされる容疑者4人の逮捕・勾留を認めた。地元メディアによると4人は10~30代で、全員が中央アジアのタジキスタン出身だという。
今回のテロは上海協力機構(SCO)案件であるとも言える
飯田)イスラム国ホラサン州(ISIS-K)に拠点を置く組織が犯行声明を出していますが、どうご覧になりましたか? 中川)米国が事前に情報を出していたとか、プーチン大統領がウクライナ関与を示唆するなど、メディアからはいろいろな情報が流れています。中国・インドの観点から言うと上海協力機構(SCO)がありますが、もともとは反テロのためにできた組織なのです。アメリカで同時多発テロ事件が起きたときくらいに、あの地域を反テロの観点から安定化させようと、ロシアと中国を発起人として、中央アジアも含めて組んだものです。その意味で、今回の件はSCO案件とも言えます。 飯田)SCO案件。 中川)「イスラム国(IS)」と「イスラム国ホラサン州」自体が、統一的な集団であると捉えられるかどうかの問題もありますが、いずれにしてもイスラム国とタリバンだと考えると、対立関係にある。米国からの話によれば、2023年4月にタリバンはイスラム国の指導者を殺害しており、仲がいいとは言えないと思います。
対立するタリバンをオフィシャルに承認する方向にあるロシアに反体制派勢力として攻撃するIS ~テロを防げなかったSCO
中川)今回、事件を起こしたのはイスラム国ですが、タリバンの方はどうかと言うと、2023年にロシア連邦のカザン(タタールスタン共和国)へ行っています。また中国は、アフガンのタリバン政権を2024年1月にオフィシャルに承認しました。もともとはインドもタリバン政権をテロとみなしていましたが、2023年からインド外務省は「いろいろな形での協力の仕方がある」と言い方を変えています。段々とロシア、中国、インドなどが、タリバン政権をオフィシャルな方向に進めている構造が見えます。 飯田)なるほど。 中川)イスラム国としては、敵陣がオフィシャルにそのような国とつながるなら、まさにテロという形で、反体制派勢力として襲撃する。そういう背景があり、「これをSCOとして止められるのか」が大前提になっていました。