米メディアは中谷潤人と井上尚弥の決戦を期待している…元ヘビー級チャンピオン、ティム・ウィザスプーンが語る中谷の「勝機」
元世界ヘビー級チャンピオンが語る「日本の逸材」
2月24日にメキシコの王者、アレハンドロ・サンティアゴを6ラウンドで沈め、WBCバンタム級チャンピオンとなった中谷潤人。『BAD LEFT HOOK』のスコット・クリスト記者、パトリック・スタンバーグ記者は、それぞれ中谷をパウンド・フォー・パウンド8位とした。この2人のボクシングジャーナリストが挙げる同1位は、井上尚弥である。 【写真】米ジャーナリストが中谷潤人を絶賛!井上尚弥を脅かす存在になると言えるワケ アメリカやメキシコの気の早いメディアは、井上尚弥vs.中谷潤人の開催を期待するようになった。中には、メキシコのトップ選手が2000年から4年にわたって3度ぶつかり合ったマルコ・アントニオ・バレラvs.エリック・モラレスのジャパニーズバージョンか? と評する者もいる。日本国内以上に、目の肥えた本場のファンが両者の対戦を心待ちにしている。 さて今回、筆者はWBCバンタム級タイトルを奪取し、3階級制覇を成し遂げた中谷潤人とサンティアゴの映像を、元世界ヘビー級チャンピオン、ティム・ウィザスプーンに見てもらった。 ウィザスプーンは語った。 「予想通りのKO劇だった。ジュントは非常にパワフルだ。長いリーチを生かした攻撃力は、申し分ない。ジャブはもちろん、ストレートもフックもアッパーも十二分な破壊力を秘めている。 サンティアゴは何とか懐に入りたかったが、そうさせなかった足捌きも良い。最初にサンティアゴを沈めた左ストレート、フィニッシュに結び付けた右フックも鮮やかだった。 2年連続のKO of the Yearだって大いに期待できる(※中谷潤人は、昨年5月20日のWBOスーパーフライ級タイトル戦でアンドリュー・モロニ―KOし、その一戦が米国の主要メディアによって年間最高KO賞に選出された)。今、ジュントは物凄いスピードで成長している。惚れ惚れするね」
「ジュントの戦いぶりには、芸術性がある」
今回のインタビューの折、ウィザスプーンは思いがけない男と中谷を比較した。 「つい先日(3月8日)、元WBA/IBF/WBOヘビー級王者だったアンソニー・ジョシュアがMMAファイターをKOしたな。3度ダウンを奪ったが、全て右ストレートだった。ボクシングの素人を相手に、得意なパンチをクリーンヒットさせての勝利さ。面白くも何ともない、単なるショーだよ。 一方で、ジュントの戦いぶりは、芸術性がある。多彩な攻撃で、見る者の心に訴えかけるファイトだ。ジョシュアじゃ、とても比べ物にならない。ボクシングってのは、ごく僅かなマスターたちが、自らのパフォーマンスを芸術の域にもっていけるんだ」 ウィザスプーンはパソコンの画面で、中谷vs.サンティアゴ戦をファーストラウンドから再生させながら言った。 「初回、ジュントはじっくりとサンティアゴの動きを観察しながら、ジャブの指し合いで勝った。どちらがチャンピオンだか分からない。相手を迎え撃っているのは挑戦者だ。前の拳でフェイントをかけながら、自分の距離を保った。サンティアゴは、まったくパンチが届かないな。 2回、ジュントはジャブ、ジャブと打ちながら、時折右のフックを同じモーションから放っている。このあたりの巧さは、実に見応えがある。俺は、この2ラウンドで勝利を確信したよ。 だが、残り10-秒を切った時、サンティアゴの左フックを喰らった。接近戦なら何発か被弾するのは当たり前だが、ここはダッキングで躱してほしかった。ジュントはブロックが得意だ。バンタム級では高身長だし、何と言っても手が長い。必然的に距離を取った戦いをするようになる。でも、クロスレンジでパンチの交換をし合う局面だって訪れる。そこで、もらわずに打ってほしいね」