mixi2が「ネット老人会のおもちゃ」で終わらないために大切なこと--現時点での機能も解説
MIXIは12月16日、新たなSNS「mixi2」を公開した。mixi2とは、テキストや画像などを共有するSNSで、一見したところでは「X」や「Threads」に近い作りとなっている。 投稿に付けられる「リアクション」は豊富に用意されている かつて「mixi」で交流した「インターネット老人会」と呼ばれる人々の熱狂ぶりがそこかしこで見られるが、MIXIのヘルプページによると、「mixiは『心地の良いつながり』を軸とした、ゆったりとしたコミュニケーションの場を提供し、mixi2は『今を共有でき、すぐ集える』を軸とした、手軽でリアルタイムなコミュニケーションができる場の提供を目指しています。」と、別のコンセプトであることが明示されている。 「mixi2」何ができる? 実際に、mixiのアカウントとmixi2のアカウントと関連付けられることはなく、まったく異なるサービスとして運用できる。 mixi2でできることは、テキスト、画像、動画の投稿、メッセージ、コミュニティだ。テキストは149.3文字(逆から読むとミクシィらしい)で、「エモテキ」と呼ばれるエフェクトをつけられる。 エモテキは、文字を動かしたり、アニメーションを追加することができる機能だ。「エモいテキスト」の略だと考えられる。 また、投稿に対して、「いいね(ハート)」以外に、「リアクション」をつけられる。リアクションには絵文字以外に、アルファベットや日本語の文字が入ったマークを選択できる。mixiらしく、投稿を長押しすると「あしあと」マークがつけられる仕掛けも用意されている。 画像と動画はあわせて4つまで投稿できる。動画は60秒までで、複数の画像を投稿するとタイル状に表示される。 投稿画面では「イベント」を作成できる。こうしたSNSのローンチでいきなりイベント機能が提供されているのは珍しい。イベントは「公開」と「承認制」で作成できる。 イベント機能の早期実装は、コミュニティを重視している設計思想を感じる。コミュニティは誰でも作ることができ、こちらも「公開」と「承認制」が選べる。ポストできる権限も、「参加者全員」か「管理人のみ」を選べる。mixi2開始直後からさっそくコミュニティを作るユーザーが多く、似たようなコミュニティが乱立している。mixiといえばコミュニティであるため、さっそく作成してみたユーザーも多いのだろう。 複数アカウントに関しては、1つのメールアドレスで最大3つまで作成できる。発信する内容ごとにアカウントを持てることをありがたく感じるユーザーは多いだろう。 現在はスマホアプリのみだが、他のSNSのようにこれからブラウザ版もリリースされると予想している。 さっそく使ってみて感じたこと mixi2の大きな特長は、「時系列でフォロワーの投稿が読める」こと。SNSは「おすすめ」の投稿を眺める仕様が増えているが、フォローしている人の投稿だけを見たいと訴えるユーザーは多い。その点、mixi2はフォローしている人の投稿が並ぶ「フォロー」タイムラインをメインとしており、その他の投稿は「発見」タイムラインで閲覧する仕様になっている。 この仕様はフォロー、フォロワーの関係性を深めるためにはいいが、一方でバズを生みにくい設計だ。いま話題の投稿が自然に目に入ってくることが少なくなる。目を引く投稿をレコメンドされることに慣れた人達は、フォローしている人の投稿に飽きてしまわないか、懸念を感じる。また、SNS全体の流れとして、ユーザーはオープンに投稿するリスクを実感し、クローズドな場所へとシフトしている。そんななか、ユーザー達がmixi2に多くの投稿をするとは考えにくく、結局「発見」タイムラインを見ることになるようにも思う。 18才以下の利用禁止という設計も面白い。海外では10代のSNSについて利用制限を設ける法整備も進んでおり、プラットフォームとしてはペアレンタルコントロール機能などのセーフティ機能を実装しなければならない世相となっている。しかし、18歳以下の利用を禁じ、成人のみとすれば、この手間は必要なくなる。 新たなSNSを浸透させるためには若者にアピールし、そこから大人へと普及させることがセオリーだ。しかし、mixi2はmixiの知名度があるため不要と踏んだのかもしれない。20代以上でもmixiを知らない若者は多いため、まずは大人向けに展開して広げていくつもりなのだろう。 mixi2のコンセプトは、「楽しい、優しい、ほっこりとした場」とされている。Xの荒廃ぶりに疲れ、新天地としてThreadsや「Bluesky」などへ移動した人達もいる。しかし、Xをまったく見なくなった人は少ないだろう。Threadsも当初は穏やかな場だったが、ユーザー数の増加によりネガティブな投稿が増えており、ユーザー同士の言い争いも見かけるようになった。それは結局、人々はネガティブな情報に心を惹かれてしまう性(さが)なのではと筆者は考えている。リリース当初のほのぼの感がどこまで続くのかは、注目していきたい点である。 とはいえ、国産SNSとしての安心感を重視する人も多い。海外企業のSNSでは、日本へのサポートが手薄になりがちだ。心当たりがないのにアカウント停止にされたり、詐欺やなりすまし広告を流されたりしていると、日本の信頼できるサポートを望みたくなる。もちろん、個人情報の国内管理といった面でも安心する人が多いと思われる。プライバシーに関する設定が細かく用意されている点も評価できる。 独自のコミュニティを構築できるか mixi2は現在、広告表示がない。しかし、今回久しぶりにスマホでmixiにログインしてみたところ、広告だらけでコンテンツを見るのが難しいほどだった。 マネタイズの面では、広告表示やサブスクリプションによる収益などが必要だ。mixi世代向けの広告やエモテキの有料アイテムを出すことなどが推測されるが、こちらの実装方法が決め手になるだろう。 また、先ほども少し触れたが、新たなテキスト系のSNSが増えても、結局Xからは離れず、運用するSNSが増えているだけという実態がある。mixi2でしかできないことがなければ、最初の熱狂は収束していってしまう。それがコミュニティでの親睦なのだろう。他のSNSのように投稿単位でのやり取りではなく、ユーザー同士が長く付き合えるコミュニティをmixi2がどう作り上げるのか、今後に注目していきたい。