「何も罪のない人を巻き込んでしまった」…プーチンを批判したロシア人記者を襲う「ロシア当局」のヤバすぎる「報復」
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第10回 『全世界が注目…「プーチンに命を狙われる」ロシア人記者が「戦争中のウクライナ」に行かなければいけなかったワケ』より続く
追跡から逃げようとしても
「この飛行機はイスタンブールに着陸しました」 フライトアテンダントが明るくアナウンスした。 棚から小さなバッグを取り、携帯の電源を入れた。ディスプレイには『ヴェルト』からのメッセージが映った。 「キシナウのホテルでピーターがあなたを待っています。ピーターはわれわれのセキュリティアドバイザーです」 ピーターの個人データと写真が送られてきた。ピーターはイギリス人だった。驚いたが無駄な質問はしなかった。 その後でもうひとつメッセージが届いた。 「自分の携帯をオフにしてSIMカードを抜いてください。あなたを追跡させないようにするためです。あなたがイスタンブールにいると思い込ませるのです」 乗り継ぎ便に乗ったらそうする、と約束した。乗り継ぎ案内の巨大な電光掲示板に、出発の近い便が表示されていた。キシナウ行きのわたしの便があったので乗り継ぎターミナルに走った。 その間にも、わたしがモスクワを発ったという情報がすでにネット上に出ていた。諜報機関はわたしの出発便と出発時間を瞬く間に公表し、嘲笑的なコメントを付けていた。 「スキャンダルにまみれたジャーナリスト、マリーナ・オフシャンニコワは本日12時40分の便でヴヌーコヴォ空港からイスタンブールへ出発した。永住目的で外国に出た模様だ。彼女が挑発行為を必要とするのは、売名行為によって、反ロシアプロパガンダをおこなう西側メディアへの就職において有利な条件を引き出すためである。