2年目の「時差ビズ」 都が1000社以上参加にこだわる理由は
鉄道会社の取り組みだけでは「限界ある」
では通勤ラッシュ緩和への効果は実際どれくらいあったのだろうか。 キャンペーンを担当する都の都市整備局によると、渋谷や豊洲など都内16駅でキャンペーン期間中の混雑状況(改札口データ)を調べた結果、朝のラッシュ時の午前8時~8時半のピーク率が、期間外と比べて平均で2.3%減少し、早朝時間帯や10時~11時台に分散する傾向がみられたという。この結果について、都は「一定の効果は出ている」としている。 東京メトロを運行する東京地下鉄(同台東区)は、昨年のキャンペーン期間中、平日の早朝、東西線(朝3本)と半蔵門線(同2本)で臨時列車を運行したが、「ピーク時間帯の午前8~9時の乗客を大きく減らすような効果は確認できなかった」と話す。ただ臨時列車の前後の時間を走る列車は混雑が幾分緩和したといい、臨時列車については、東西線で最大乗車率が約7割、半蔵門線では約9割となり、乗客からは「車内が空いていて快適だった」との声があったという。 同社はラッシュがピークを迎える前の利用を推奨する「オフピーク通勤(通学)」のキャンペーンを期間後も継続することを決めた。「鉄道会社の取り組みだけでは限界がある。多くの企業の働き方が変われば、効果が出てくるのではないか」と今後に期待を示した。 同じく早朝に臨時列車を運行した東京急行電鉄(同渋谷区)では、キャンペーン中、田園都市線で、午前7時~8時のピーク時間帯の混雑率が数%減ったという。
「時差ビズって何」と言われるケースも
業種によっては、企業が時差通勤やテレワークを導入することが困難なケースも当然ある。NTTデータでは、顧客の会社に常駐する従業員の場合、顧客との関係上、時差通勤やテレワーク制度の利用が難しかったという。同社の人事本部は「ある顧客から『時差ビズって何』と言われた従業員もいた。世の中全体で時差ビズに取り組むムーブメントが起これば、さらにやりやすくなるのだが」とこぼす。 時差ビズの取り組みをさらに社会的に広げるべく、都の都市整備局は、今年の参加企業数の目標を1000社以上に設定する。7月9日現在では741社だが、時差ビズのキャンペーンサイトで先進事例を紹介するほか、都内の企業各社や東京五輪・パラリンピックのスポンサー企業に協力を要請し、参加企業を増やしたい考えだ。キャンペーン期間も、昨夏は約2週間だったが、今夏は7月9日~8月10日の約1か月に拡大。さらに今冬の2019年1月下旬にも2週間程度実施する。 小池知事は6月15日の定例会見で「満員電車は当たり前、という意識を変え、行動パターンを少し変えることによって快適な通勤ができるようにしよう、ということ」とキャンペーンの狙いをあらためて強調。「より多くの人々に時差ビズへの参加をお願いして、新しいライフスタイルとしてしっかり定着させていきたい」と訴えた。 (取材・文:具志堅浩二)