転職市場にあふれるサムスンの半導体関連役員100人超…中国行きの懸念も
先月29日に2025年の定期役員人事を断行したサムスン電子で、半導体(DS)部門だけで100人以上の役員が退職することが分かった。サムスンの半導体部門で1年間に100人以上の役員が退職するのは前例のないことだ。一部では、退職する役員が今後、限られた韓国国内企業ではなく中国に向かうケースが増えるとの懸念も出ている。 【グラフィック】サムスン電子515人がエヌビディアに…引き抜き合いの半導体人材競争 関連業界が先月28日に明らかにしたところによると、サムスン電子は役員の数が飽和状態にある半導体部門で役員の規模を大幅に縮小するという。およそ400人の役員のうち100人以上が今回の人事で退職するといい、その中にはメモリー事業部出身のベテラン役員も多数含まれる見通しだ。 これに先立ちサムスン電子DS部門長(副会長)のチョン・ヨンヒョン氏は、サムスンの半導体の競争力が低下した根本的な原因について「部署同士の意思疎通において間に壁が生まれ、リーダー同士や、リーダーとチームメンバー間で、共同の目標に向けた真剣な意思疎通ができていなかった」と指摘し「現在の状況から逃れるために問題を隠蔽(いんぺい)したり回避したりし、希望値と意志だけが反映された非現実的な計画を報告する文化が広まり、問題がさらに大きくなった」と批判していた。 前職の副会長をはじめとするサムスン電子の経営陣は、サムスンの半導体部門で部署間の協業プロセスが円滑でない理由の一つに、肥大化し過ぎた役員組織を問題として挙げている。内部では、サムスン電子は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)時に世界的なIT機器の需要急増という予想外の好況期を迎え、その時に組織を効率化すべきだったにもかかわらず、逆に「昇進祭り」と言えるほど大規模な昇進人事を行っていたことが敗因だとの見方も出ている。
今回の役員人事を機にサムスンの半導体を離れる役員は、50代と60代がほとんどだという。退職後、新たなキャリアを模索する可能性が高いということだ。これまでも中華圏の半導体企業に転職するサムスン電子、SKハイニックス出身のエンジニアが徐々に増えていたが、技術流出のリスクが高まる中、サムスンの半導体部門で長い間ノウハウを培ってきた専門人材が大量に転職市場に出ていくことに対し、懸念が高まるばかりだ。 業界ではすでにサムスン電子、SKハイニックス出身の元役員らがメモリー技術を中国企業に流出させることに対する警戒心が高まっている。先月25日には、サムスン電子とSKハイニックスで役員を務めた人物(66)が、サムスンが独自に開発した20ナノDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)の核心工程技術を中国に流出させた容疑で逮捕・送検されていたことが分かった。韓国警察は、流出した技術の経済的価値は4兆3000億ウォン(約4600億円)以上とみている。 サムスンの事情に精通する業界関係者は「かつてブローカーを通じて少数の大物とだけ水面下で接触していた中国の各企業は、今や堂々と年俸の3-4倍を提示してサムスン電子とSKハイニックス出身のエンジニアを吸い寄せている」として「以前は非常にレアなケースだったかもしれないが、現在は国籍を別の国に偽装した中国系資本の半導体企業への移籍も活発に行われている」と説明した。 韓国半導体産業協会のアン・ギヒョン専務は「サムスン電子やSKハイニックスで長い間勤務していた専門人材を海外企業や中国に行かせず韓国国内につなぎとめておくために、政府や協会レベルでも最大限の努力をしている」として「特許庁の審査官や、産学協力に関連する教育分野などの行き先に行けるよう誘導しているが、高い年俸に引かれてスカウトされるエンジニアを引き留める手立てはない」と話した。 ファン・ミンギュ記者