2024年度上期の倒産は4990件、6半期連続で増加 2年連続で全業種・全地域が前年同期を上回る ― 全国企業倒産集計2024年度上半期報
負債総額は3年連続で1兆円を超える
2024年度上半期(4月-9月)の倒産件数は4990件(前年同期4208件、18.6%増)で、上半期としては2013年度以来の5000件に迫る件数を記録した。半期ベースでみると、2021年度下半期(2978件)以降、6半期連続の増加となった。負債総額は1兆3294億9200万円(前年同期1兆5868億3600万円、16.2%減)と、上半期としては3年連続で1兆円を超えたものの、負債が100億円超の大型倒産が10件から3件に減少したことも影響し、上半期としては2年連続で前年同期を下回った
『粉飾倒産』が急増、年間最多を更新へ
不適切な会計処理の末、経営破綻に追い込まれる『粉飾倒産』が急増している。2024年の粉飾倒産は9月までで74件判明し、集計を開始した2016年以降で同期間(1-9月)における最多を更新。このままのペースで推移すれば、年間最多件数(2019年・84件)を更新するのは確実視される。9月は、プラスチック代替の素材メーカー「環境経営総合研究所」(負債246億円、会社更生法、東京)や、太陽光発電事業の「旭機工」(負債52億8300万円、民事再生法、東京)などが、粉飾発覚による対外信用の失墜から倒産に追い込まれた。 足元では、金融機関の間で融資先の“バンクミーティング入り”に関する話題が飛び交っている。なかには、“世紀の大粉飾”として昨年話題を集めた「堀正工業」(2023年7月破産、東京)のように、多くの金融機関が粉飾決算を見抜けなかったケースも少なくない。ここ数年の粉飾決算の特徴のひとつとして、金融機関に借入金の返済猶予や追加支援を申し入れた際に発覚する事例が相次いでおり、アフターコロナの局面ではこうした動きが相次ぎそうだ。
“目利き力”厳しく問われる時代に
金融庁は8月30日、2024事務年度の金融行政方針を公表した。数ある方針の中で注目されるのが「事業者の持続的な成長を促す融資慣行の確立」の項目。事業の実態や事業から生み出される将来キャッシュ・フローといった事業性に着目した融資のあり方についてより一層の検討を行い、事業者の持続的な成長を促すという。まさに「言うは易く行うは難し」だが、金融機関だけでなく一般の事業会社でも、いわゆる“目利き力”が厳しく問われる時代になる。 主要行等向けモニタリング方針の中で記載された「必要に応じて個別債務者の自己査定や償却・引当等の状況を確認する」との一文にも注目したい。50前後の金融機関が欺かれた堀正工業の巨額粉飾事件のような、金融機関の信用リスク管理態勢に懸念を抱かせる案件が続くなかで、金融庁は個別債権(融資先)の資産査定も辞さない姿勢を示した。これにより、各金融機関がこれまで以上に企業を見る目が厳しくなるのは明らかだろう。「金利のある世界」が戻ってきたなかで、金融機関の選別からふるい落とされる企業が一定数出てくるに違いない。