日本のテロ対策は充分なのか? 警戒すべき「国際的紛争が持ち込まれる」可能性
「国際紛争持ち込まれ型テロ」への警戒
国際と国内の動きを連結させて分析しなければならないのは、筆者が「国際紛争持ち込まれ型テロ」と名付けているパターンにも該当する。 外国人が、日本を狙う目的ではなく、それでも日本でテロを起こすことがある。1980年代に、東京・有楽町でサウジアラビア航空の事務所が爆破されたことがあり、公安警察はイランの仕業ではないかと疑ってきた(未解決)。 さらに、成田空港で手荷物が爆破して日本人作業員が死傷したこともある。これはシク教過激派がインド国営のエア・インディア機を空中爆破させようとして時限爆弾を仕掛けたが、設定時間よりも早く離陸前に爆破してしまったのである。このようなイランとサウジアラビア、シク教過激派とインド政府の対立は、当時の国際情勢では目立つことであった。 一般的に、A国とB国が対立する最中に第三国にある相手の権益を攻撃したり、C国の反政府過激派組織が他国でC政府の権益を標的にしたり、逆にC国政府が過激派や政敵を他国で暗殺したりするのはよくある。紛争当事者間のテロや破壊工作の動きを観察し、同時に自国内に紛争当事者の権益や出身者がどこにいて、どのような活動をしているかという国内情勢を重ね合わせて分析することは常に求められる。 英国では、ロシアのプーチン大統領に反旗を翻して逃亡してきたロシア人が次々に暗殺の標的になった。しかもロシアからの刺客は、核物質のポロニウムや神経剤のノビチョクを持ち込んでくる。周囲も汚染されるので、犯人の行動範囲内にたまたま居合わせたイギリス人多数が核物質で被曝したり、神経剤に触れて重篤に陥ったり死亡したりする者も出た。 かつて、都心の一流ホテルでは白昼堂々「金大中事件」が起きた。特殊な武器が使用されたわけではないので日本人に被害は及ばなかったが、そもそも他国内の対立が我が国に暴力として持ち込まれるような事態は未然に防止しなければならないし、防止できずにテロが実行された場合でも捜査機関、出入国管理、税関、医療機関、外交当局などの情報協力でいち早く事件の全容を把握しなければならない。