米百貨店“再編”が意味するもの サックス親会社によるニーマン・マーカスG買収【鈴木敏仁USリポート】
またHBC傘下にはHBCプロパティーズ&インベストメントという不動産運営企業が存在し、これがサックスグローバル・プロパティーズ&インベストメントという名称となって、HBC傘下の事業ユニットとなる。
整理するとHBCの下にサックスグローバル、サックスグローバル・プロパティーズ&インベストメント、ハドソンズ・ベイ、の3つが並ぶ組織構造となるわけである。
買収はHBC単体ではなく複数の投資企業がシンジケートを組んでいるのだが、目を引くのがアマゾンとセールスフォースが少数株主として参加している点である。
私の情報では、アマゾンはECサイドのロジスティクスを請け負うという。つまり全屋号のECのフルフィルメントはアマゾンがサードパーティーとして担うことになるのである。また“カスタマーエクスペリエンス“や”AIを使ったイノベーション“という記載もあるので、アプリなどに何らかの関与があるのかもしれない。
アマゾンはファッション分野でも相当な売り上げを上げているのだが、基本はベーシックで高価格帯は弱く、ラグジュアリークラスは挑戦しているものの存在感は薄いというのが現状である。フルフィルメントから入り、これを足がかりとして高価格帯ファッション分野に何らかのチャンスを見いだそうという目論見なのだろう。
またセールスフォースの役割はおそらくECプラットフォームの提供である。情報では、EC企業上位2000社中の76社がセールスフォースのプラットフォームを使用しており、合算売上高は1360億ドルに達している。
HBCは2021年に、リアル店舗としてのサックスとデジタルのサックス・コムを切り離し、サックス・コムは投資企業から5億ドルを調達するという、非常にユニークな組織戦略を取っている。デジタル事業は運営だけではなく資本も完全に別扱いとしたのであった。リアルとデジタルを切り分けることに対して業界では否定的な見解が圧倒的だった。