「ただの不調かと思ったら…」自分では気づきにくい!? “更年期のせい”だと気づきにくい症状とは
もしかしたらその不調、更年期かも…?
40代に入ってから、ちょっとしたことでイライラしてしまったり、急に汗をかいたと思ったら、今度は急に体が冷えてしまったり…。そんな心と体の不調を感じていませんか? 【マンガで読む】取引先で突然の出血…。子育てが一段落したと思ったら「これってまさか、更年期!?」40代ワーママを襲った悲劇 それは、もしかしたら「更年期」かもしれません。 女性なら、誰もが迎える更年期。よく、その単語は耳にするけれど、でもいったい更年期ってそもそも何なのか、よくわかっていない方も多いのではないかと思います。 そこで今回は、数々のメディアで活躍する産婦人科医・高尾美穂さんの著書『悩み・不安・困った!を専門医がスッキリ解決 更年期 そしてなりたい自分に近づく方法』(新星出版社)から、更年期の症状や、どうして更年期の症状が起きるのか、詳しく解説された箇所を一部抜粋してご紹介いたします。
こんな不調や変化は、更年期のせいかも!
更年期には、体にも心にも大きな変化が起こり、人によってはさまざまな不調に悩まされます。なかには、それが更年期のせいとは気づきにくい症状や、自覚症状がないまま体の内側で起こっている変化もあります。 40代後半~50代前半くらいで当てはまるものがあれば、更年期の症状かもしれません。 【思い当たるものはありますか?】 ・疲れやすい ・理由もなく心臓がドキドキすることがある ・手指がこわばる ・急に汗がたくさん出ることがある ・手足や腰が冷える ・目や肌が乾燥する ・よく眠れない ・イライラしやすい ・骨密度が低下した ・コレステロール値が高くなった
エストロゲンの働きを知れば、変化にも納得
更年期の不調は、心身の健康をサポートしていた「エストロゲン」が急激に減少するという変化に対応しきれないこと、そして、エストロゲンの働きがなくなることによって起こります。 エストロゲンは、卵巣が分泌する女性ホルモンの一つで、10代に分泌量が急激に増え、それから閉経するまでの間、女性の心身に働きかけています。40代後半からはエストロゲンの分泌量は急激に減り、閉経後はほとんど分泌されません。 では、エストロゲンにはどのような働きがあるのか、具体的に見てみましょう。 <エストロゲンの主な働き> 女性の体の多くの器官に働きかけています。 【妊娠に備えた変化をもたらす】 第二次性徴期を迎えた女性は、丸みを帯びた体つきに変化します。また、妊娠に備えて子宮内膜が厚くなります。これらの働きを司っているのがエストロゲンです。 妊娠しなかった場合、厚くなった子宮内膜がはがれ落ちる変化を月経と呼びます。卵巣の機能が低下してエストロゲンが分泌されなくなると、月経は来なくなるのです。 【コレステロールを適正に保つ】 エストロゲンがつくられる際は、材料としてコレステロールが使われます。また、エストロゲンにはLDL(悪玉)コレステロールが肝臓に回収されるのを促す作用もあり、血液中に余分なコレステロールがない状態を維持できるように働きます。 【骨を丈夫に保つ】 骨は、「破骨(はこつ)細胞」が骨を壊し、「骨芽(こつが)細胞」が新しくつくるという代謝により、毎日少しずつつくり替えられています。エストロゲンは、破骨細胞が骨芽細胞を上回る働きをしないようにコントロールして、骨の健康を維持します。 【メンタルの安定を保つ】 エストロゲンには抗うつ作用があります。エストロゲンは、精神を安定させる働きを持つ神経伝達物質・セロトニンの生産にかかわっているほか、自律神経を「副交感神経の活動が優位」な状態に維持します。 エストロゲンの急激な減少は自律神経にも影響し、そこから別の症状も起こってきます。 【血管をしなやかに保つ】 血管が拡張するために必要な一酸化窒素(NO)の産生を促すことなどにより、血管の弾力性を保ちます。 【肌のうるおいや髪のツヤを保つ】 エストロゲンにはコラーゲン産生を促す作用があり、肌のハリやうるおい、髪の太さやツヤを保ちます。コラーゲンは、骨、血管壁、関節軟骨なども形成しているたんぱく質の一種です。 【そのほか、いろいろ!】 更年期には、目・口・鼻・腟や外陰部などが乾燥したり、手指のこわばりや、関節の変形による痛みなどが起こることがありますが、これらの変化にもエストロゲンがかかわっていると考えられています。 こんなに多くのサポートを失うのですから、心身に変化が起こるのは当然ですね。 次回は、女性のライフステージとエストロゲン分泌量について詳しく解説します。
〈著者プロフィール〉高尾美穂(たかお・みほ)
医学博士・産婦人科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。ヨガ指導者。女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長。 東京慈恵会医科大学大学院修了後、東京慈恵会医科大学病院産婦人科助教、東京労災病院女性総合外来などを経て現職。音声配信プラットフォームstand.fmでは「高尾美穂からのリアルボイス」をほぼ毎日配信し、リスナーの多様な悩みに答え、楽に生きられる考え方を届けている。
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