「巨人の星」原作の父から影響 根底に優しさ 「オーイ!とんぼ」のかわさき健さん(下)
「自分ではそう思わずに書いているが、自分のカラーというか武器でいいんじゃないかな。父の作品から一番影響を受けている。父の作品の根底には優しさが流れている。自分も世の中は善人の方が多いと思いたい」
ーー登場人物のセリフはどうやって思いつく
「登場人物に言わせる言葉は、自分の身近な人から言われた言葉とかが多い。キャラクターの名前には強いこだわりがあるが、「とんぼ」という名前も母親に『あんたは全く極楽とんぼなんだから』といわれてひらめいた」
ーー自身とゴルフの向き合い方は
「プロを目指していたときは思い返したくないくらいだが、当時の自分はうまくはなれなかったけど、よく頑張ったなと声をかけてあげたい。原作を書くようになって、そのときはゴルフに触れたくなかった。ゴルフものの依頼がいくつかきたが、最初はすごく嫌だった。でも1本2本と引き受けるとますますゴルフものの依頼がくる。需要があるということは自分の原作はちょっとは面白いのかもしれないと思うようになった」
ーーゴルフを始めたのは
「本格的に始めたのは高校の時。高校にはゴルフ部があり、関東ジュニアに出場するような強い同級生がいて、その影響もあってゴルフを始めた。勝つなら同じことをやっていてはだめだと部活には入らなかった。その彼は研修生の時に亡くなった。海でおぼれた子供を助けようとした。(遺体は)子供の手を離していなかったと聞いた。だから、自分はゴルフでは絶対に投げないでいようと思う。やりたくてもやれなかった人がいる中でゴルフをやれているだけで幸せだと」
ーーとんぼという作品を通じて読者に伝えたいことは
「競技や仕事になればゴルフは絶対辛くなる。ゴルフは『あれをしちゃだめ、これしちゃだめ』が多い。教え方も『何々しないように』というのが多い。でも、本当は何をしてもいいんじゃないか。スコアだけじゃなくて、野球で変化球を投げるみたいにいろいろな球を打ってみるとか。単純な楽しさを感じ取ってもらえたらというメッセージを込めている」(聞き手 高木克聡)