「マネージャーなしでやれる人間ばっかりだ」生前、ジャニー喜多川は現在の「エージェント制」を予見していた
成功するのか懐疑的な声もあった、ジャニーズ事務所のエージェント制の導入。だが、今春のSTARTO ENTERTAINMENT始動後もタレントたちの活躍に陰りはない。むしろ、各々のソロプロジェクトが活性化、ネット上にもその場を広げるなど、勢いが増している印象すらある。なぜ、“ジャニーズ”とエージェント制は相性が良かったのか? 『夢物語は終わらない 影と光の“ジャニーズ”論』(文藝春秋)でその理由が予見されている。(以下は本書の抜粋)
実はあったエージェント制の成功例
2023年、ジャニーズ事務所はSMILE-UP.と社名変更をして被害者補償会社となり、翌年にはSTARTOENTERTAINMENTが本格始動した。その際、エージェント契約が新たな試みとして大いに話題となった。エージェント制の導入を発表した会見では東山紀之が「日本の大手芸能プロダクションで、これだけ多くのアーティストと契約することになるエージェント会社が立ち上がるのは初めての試み」と発言していた。 ちなみにエージェント制とは、従来の、仕事の獲得からギャラ交渉やスケジュール管理、トラブル対応などあらゆる業務を芸能事務所が行うマネジメント契約と違い、タレント側の裁量が格段に大きくなり、自主性も求められる制度である。マネジメントという言葉が「管理」を意味する一方、エージェントという言葉は「代理人」を意味することからも、その差は想像できるだろう。 前代未聞の試みに、うまくいくのか訝いぶかしがる向きもあるかもしれない。だが、実は、ジャニーズ事務所時代にもエージェント契約の“前例”が存在する。それが岡本健一である。岡本は、2021年11月に、ジャニーズ事務所所属者としては初めてのエージェント契約を締結。さらに、その後、既に退所していた3人とともに、男闘呼組を約30年ぶりに再始動するというミラクルをやってのけたのである。全員が50代になっての再始動だったが、岡本は「今のためにデビューしたんじゃないか」「このために活動休止になったんじゃないか」と語るほどの人気で、充実の活動を行った。 また、岡本はエージェント契約への移行の約半年前に、休止・解散や、辞めることに対する事務所の姿勢をこう称賛している。「すごいと思いますよ。シブがき隊にしても僕らもそうですけど今の子たちにしても、ちょっと解散したいとか一時休止したいとか……みんな聞いてくれるじゃない、タレントの気持ちっていうのを。そこがすごいなと思うんですよね。普通だったら『勝手に辞めんなよ!』って話になると思うの」 「勝手に辞めんなよ!」は芸能界の普通でもある。しかし、この発言からは芸能事務所としてのタレントをガチガチに縛る姿勢を感じ取ることができない。岡本の成功や、この姿勢だけではなく、実は、ジャニーズ事務所には、エージェント制の土壌があったと言える。ここからは、その理由を述べていきたい。