[MOM4883]帝京大可児FW加藤隆成(3年)_驚異の30m“ウォーターショット”弾も炸裂! 全国通算9発の注目エース、最後の冬は「百発百中」の境地へ
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [11.2 選手権岐阜県予選準決勝 帝京大可児高 4-1 大垣日大高 長良川球] 【写真】「かわいい3人」「癒されます」…影山優佳さんがなでしこ戦士との3ショット公開 全国でも結果を残し続ける帝京大可児高の絶対的エースは、水びたしのピッチでも輝きを失わなかった。岐阜県予選準決勝の前半14分、まずは水たまりから放った約30mのロングシュートでGKの頭上を射抜き、先制点を挙げると、3-1の後半20分には相手の連係ミスにつけ込み、シュートフェイントからの左足シュートでダメ押し弾。これで今予選4試合の得点数は驚異の「20」に達し、全国への切符に王手をかけた。 FW加藤隆成(3年=帝京大可児中)は、1年生の夏から帝京大可児高の背番号10を託されたエースストライカー。入学以来、夏冬全ての全国大会に出場しており、1年夏のインターハイこそ途中出場にとどまったが、冬の選手権ではレギュラーの座を掴むと、2年時はインターハイ3得点に選手権2得点、今夏のインターハイでも4得点を挙げ、合計9得点と着実に結果を残し続けてきた。 そうして迎える高校最後の選手権。昨季の岐阜県1部リーグで通算40得点、今季も現時点で30得点と県内では無類の得点力を誇る中、「決定力という部分は3年間で上がった。全国で点を決めることができて自信もついたし、裏への抜け出しだったり、背負ってやったりするところのレパートリーも増えてきた」という成長も示すべき集大成の舞台に挑む。 チームは初戦から多治見高に22-0、岐阜高に18-0、岐阜聖徳学園高に6-0と大勝続きで予選を突破し、加藤自身も合計18得点を記録。異質な得点力はこの日、岐阜県1部の大垣日大高を相手にもいかんなく発揮された。 前日から降り続いた大雨により、試合はピッチのいたるところに水たまりができる厳しいコンディションで行われたが、先制ゴールはゴルフの“ウォーターショット”のような形で生まれた。前半14分、MF青木嘉宏(2年)のドリブル突破が深い水たまりに阻まれ、ボールが止まる形になると、そこに走り込んだ加藤がノートラップで右足一閃。水たまりもものともせず、ゴール約30mの位置から豪快なロングシュートを突き刺した。 「1点目はこぼれてきたところでGKを見たら、前に出てきていると思っていたので、あとは決めるだけかなと思っていた。イメージしたとおりに決められて良かった」(加藤)。目の前では大垣日大高の選手がスライディングで阻みに来ていたが、その激しい対応をも上回るスーパーゴールだった。 またこの日の加藤は“決めるだけ”ではなかった。ピッチコンディションの影響でボールをスムーズに前進させることが難しい中、中盤に降りてのポストプレーや、ロングボールのターゲット、サイド裏へのスプリントで次々に攻撃起点を担当。その振る舞いは自らのゴールに警戒が集まっていることに加え、準々決勝・岐阜聖徳学園高戦(○6-0)での反省が活かされていたという。 「自分が決めるのもそうだけど、自分が注目される中、人数が来るので、周りの子たちが空いてくる。僕以外にも点を決められる選手がいるので、自分自分とならずに冷静に周りを使っていきながらやっていきたいと思っている」 「先週の試合ではエゴを出して1点しか決められなくて、自分はカッとなってしまう部分があって、冷静さを取り戻せないこともある。でも自分がシュートをたくさん打っているぶん、相手のCBも正面に入ってくるので、冷静に相手を見ながら空いている人に出せればいい。勝負に勝たないと意味がないと思っているので、そういうところは冷静にやっていきたい」 その冷静さはゴール前の判断にも活きていた。加藤のチャンスメイクの貢献もあり、前半終了間際に一時同点に追いつかれたチームは直後に再び勝ち越すと、後半にもゴールを重ねて3-1に。すると後半20分、加藤は落ち着いたポジショニングから相手の連係ミスにつけ込み、左に持ち出すシュートフェイントからダメ押しゴールを決めた。 小学生時代はボランチをしていたが、帝京大可児中進学後から歩み始めたストライカーとしての道。「前はパサーというかスルーパスを出すのが楽しかった。中学に入って中3のチームに絡ませていただいた時にFWをやって、決めるのも楽しくなった。自分が目立つのは苦手じゃないので、自分の点で勝たせられるところがいいかなと思っている」。これまでのサッカーキャリアを通じて積み重ねたものが、さまざまな形で結実しようとしているようだ。 そうして辿り着いた最後の県決勝。対戦相手の中京高とは今夏のインターハイ予選で延長戦の死闘を繰り広げていることもあり、加藤は「まずは来週勝たないと全国はない。そこは気を抜かずに」と油断するつもりはない。 ただ、その先を意識した高い基準で取り組みを続けてきた自負もある。「今年のチームは全国優勝を狙うチームだと思っているので、一つ一つ勝てるように頑張りたい」。掲げる目標は日本一。妥協なきエースは「まだ決定力が足りない。今日もたくさんチャンスがあった中で全部を決められなかったので百発百中を意識している」とさらなる境地を目指し、最後の冬を戦い抜く構えだ。