ディープフェイク性犯罪、なぜ特に韓国で大きく問題化されたのか?
[来週の問い]
今月3日、「ディープフェイクデジタル性犯罪の防止と対応策準備に向けた政策討論会」が国会で行われた。テレグラムに各地域、各学校の「重知ルーム」(知り合いが重なるの人たちの部屋)が作られ、ディープフェイク性犯罪が繰り広げられていることが、先月22日のハンギョレの報道で公になってから10日あまり後のことだ。 討論会が終わる直前、ある外国メディアの記者が質問を投げかけた。「ディープフェイク技術も10代の青少年も韓国だけでなく他国にも存在するのに、ディープフェイク性犯罪はなぜ特に韓国でこんなにもはやく、大きく問題となったのでしょうか」 京畿大学犯罪心理学科のイ・スジョン教授は、「小学校、塾などでは水準の高いコーディング教育が行われているが、技術そのものを教えるだけで、『コーディングで生じる最悪の結果とはどのようなものか』を予防的観点から教育していないことが問題」だと答えた。国会女性家族委員会のイ・インソン委員長(国民の力議員)は、「(ディープフェイク性犯罪は)女性嫌悪、男性嫌悪、そのような問題とはまったく異なる、個人に関するものだ」とし、「ある一部分の問題にあまり集中しないようにしてほしい」と呼びかけた。イ委員長は、「韓国の生徒たちは、それが本当に間違っていることなのか分からない中、単なる友達同士のひとつの遊びのように入っていって、それを利用して金銭的な利益を得る集団ができたことで、妙なことになっているように思う」とも述べた。 外国メディアの記者の疑問は解消されただろうか。それとも、さらに迷宮に深入りしてしまっただろうか。グローバルセキュリティー企業「セキュリティヒーロー」が昨年、10件のディープフェイク性搾取物ウェブサイトとユーチューブなどの85の動画プラットフォームチャンネルを分析したところ、一般のディープフェイク物の場合、登場人物に女性が占める割合が77%であった一方、ディープフェイク性搾取物では、女性の割合は99%だった。にもかかわらず、ディープフェイク性犯罪は性別とは関係なしに起きる「個人の逸脱」であり、「子どもたちの悪意のないいたずら」だという女性家族委員長の発言は、政権党に問題を根絶する意志はあるのかという疑問を抱かせる。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領も大統領候補時代、あるメディアとのインタビューで、「構造的な性差別はない。差別は個人の問題」だと述べている。 専門家たちは、ディープフェイク性犯罪が先端技術の「新種の犯罪」であるという点ばかりを強調すると、被害者の不安が強くなるだけで、きちんとした解決策を見出すのが困難になると指摘する。韓国女性団体連合のキム・ミン・ムンジョン共同代表は、「韓国社会が女性の体と男性の体をどのように異なるものとして認識するのか、その違いが結局は被害者の性別として表れる」として、「構造的性差別に触れないまま、過ちを犯した個人をあぶり出し、共同体から追い出すという安易なやり方ばかりを繰り返していては、さらに大きな問題が発生せざるを得ない」と述べた。韓国サイバー性暴力対応センターのキム・ヨジン代表は、「女性を道具とみなすという背景が強い社会では、いくら立派な技術でも女性を害するやり方で使われるということを見逃してはならない」と述べた。 性平等教育を研究する教師の会「アウトボックス」が2020年に韓国両性平等教育振興院と共同制作した小学生用のデジタル性犯罪予防授業の案内書には、次のように記されている。「児童は、単に性別が同じだという理由で『加害者』と自身を同一視したりはしません。むしろ男児か女児かを問わず『被害者』の立場に立って犯罪を見つめ、問題を語ります。(中略)これは、特定の性別を潜在的加害者にする授業ではなく、性差別構造を理解し、差別に抵抗する市民へと育つ授業です」 チョン・インソン|ジェンダーチーム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )