日本育ちの娘たちを全額奨学金で米国名門大学へ(1) 子どもたちを英語の世界につなぎたい
出産と同時に火がついたバイリンガル子育てへの情熱
ニューヨークで5年間働いたあと、私は1995年、家業のレストランを継ぐために帰国、ニューヨークで出会った日本人と結婚しました。その後、夫はイギリスの大学院に留学してホスピタリティー・マネジメントの修士号を取得。その過程で、彼もまた英語で大変くやしい体験をしたと言います。 帰国後しばらくはほとんど英語に触れることのない生活が続きましたが、2000年に長女を出産したとき、再び英語への情熱に火がつきました。私や夫のようにみじめな思いをさせないために、なんとしても子どもはバイリンガルに育てなければ――そう思い立ち、私は長女のベビーシッターを、ワーキングホリデーで来日して上智大学で日本語を学ぶイギリス人女性に頼みました。私たちの「バイリンガル子育て」の始まりでした。 私の子育ては、「いつ何があっても、生きていけるように強くたくましく育てる。どこの国に行っても、学校に通ったり、仕事をしたりできるように日英バイリンガルに育てる。そして、人に優しく育てる」が基本です。 長女は英語のプリスクール、日本の公立小学校、日本の中高一貫校、アメリカの大学という道筋を進みます。2004年に生まれた次女にも同様に生まれてすぐ英語教育を開始。生後18カ月からプリスクール、年少から小学校はブリティッシュ・スクール・イン東京、日本の中高一貫校を経て、現在アメリカの大学の2年生です。
「うちには無理」でなく、できる方法を工夫することから
ここまで読んで、「バイリンガル教育なんて、うちではとても無理」と思われる方が多いかもしれません。でも、東京など大都市のお金持ちや特別に英語ができる親でないとできないかというと、そんなことはないと思います。コロナ禍以降、世界的にオンライン講座が増えています。無料アプリでフォニックスやタイピングを覚えることもできますし、英語で学ぶアートや理科、算数など、子どもの興味に合う講座も豊富です。“Kids Science Class Online”や“Kids Guitar Class Online”などと検索してみてください。 海外からホームステイの中高生を受け入れて、家族みんながグローバルな感覚と英語力を身につけたお宅もあります。少し無理してもやってみる価値はあります。受け入れ家庭には金銭的な補助が出るケースも多いです。私も仕事部屋を明け渡して、ホームステイの高校生を1週間から5カ月間、順番に3人を受け入れました。 長女はほぼ親の負担なく行かせていただけるロータリークラブの交換留学なども利用しました。例えば、文部科学省による「トビタテ!留学JAPAN」プログラムでは、高校生の短期留学への返済不要奨学金が1年に700人分も用意されています。 海外大学への進学を支援する返済不要の奨学金制度もかなり増えてきました。その効果で、海外大進学を志望する学生が全国的に増えています。代表的なものでは、柳井正財団や笹川平和財団の奨学金制度がアメリカの大学学部での学位取得留学に必要な4年間の費用をほぼすべて負担してくれます。 【海外大進学を支援する主な給付型奨学金制度】 ▼柳井正財団「海外奨学金プログラム」(https://www.yanaitadashi-foundation.or.jp/) ▼笹川平和財団「笹川奨学金」(https://scholarship.spf.org/scholarship/) ▼江副記念リクルート財団「リクルートスカラシップ」(https://www.recruit-foundation.org/scholarship/) ▼グルー・バンクロフト基金「奨学生」(https://grew-bancroft.or.jp/) ▼日本学生支援機構(JASSO)「海外留学支援制度」(https://www.jasso.go.jp/ryugaku/scholarship_a/gakubu/index.html) では、こうした奨学金を提供する財団や制度が選ぶのは、どんな高校生なのでしょうか。財団が指定する名門大学に合格するには何が必要なのでしょう? 私は、次女が大学に合格した2023年春から、同じようにアメリカの名門大学に合格したり、各財団の奨学生になったりした日本人学生たちにアンケートをして、セミナーに登壇してもらってきました。そこで確認できたのは、彼らには高い学力と英語力に加えて、次のような要素がそろっていたことです。 ・自分で考えて行動する力 ・新しいことに挑戦する度胸 ・個性と自由な発想 ・探求心と研究テーマへの情熱 ・社会貢献の意識 ・人を引きつけるコミュニケーション能力 そして、彼らが生まれ育ったのは、「うちには無理、うちの子なんか」と引っ込み思案になるご家庭ではありません。常に、わが家にできる方法が何かないだろうかと懸命に情報収集し、工夫する創造性とチャレンジ精神を持つ保護者の皆さん。子どもがやりたいことを見守り、チャンスを広げてあげられるようにサポートする、そういう家庭だったのです。
加藤暁子