「クリニーク」創業家ドクターに聞く、シンプルスキンケアの哲学と次の研究分野
パルド:ブランドの長い歴史の中で、ニキビケアの分野から新しいカテゴリーを作ったり、日焼け後のケアを充実させたり、色素沈着の対応する商品群もブランド誕生時にはなかったものだ。妊娠をコントロールするピルを使うようになって色素沈着を起こす人が出てきたという経緯がある。シワに対するニーズも増えている。それにはレチノイド(レチノールをはじめとするビタミンAを指す総称)が有効で、レチノイドは皮膚病に対して医薬品として効能がある物質だが、それをより安全に使うための研究開発も行った。最近では、レーザー照射と複合成分の塗布を比較するような臨床研究の結果も発表している。このようにニーズに対応する形で商品カテゴリーを拡充してきた。
慢性的なアレルギーの研究に注力
WWD:現在、注力している研究分野は?
オラントラック:「クリニーク」は安全性を最も大事にするブランドだ。アレルギーに対するサイエンスを進展させることに常に関心を持ち続けている。アレルギー反応には、ダメージを起こす何かがその裏にあるということだ。体には免疫反応という大事なシステムがあって、有害な作用を起こそうとするバクテリアに対抗するために免疫機能である炎症が起きる。その炎症を抑えることは恩恵もあるけれど皮膚組織に対して何らかのダメージを与えることにもなる。今、われわれが考えているのは、長く続く慢性的なアレルギーと皮膚の老化には関係があるのではないかということだ。老化と炎症という2つの現象に共通性があるのではという仮定から何か知見を得て、スキンケアに使えることがあるのではいかという研究を行っている。アレルギーを持つ人は年々増えており、さらにアレルギーを慢性的に持つ人はそうではない人と比べて老化が早く進んでいる。
パルド:「クリニーク」は55年間にわたりアレルギーテストを行ってきた。そんなブランドはほかにそうあるものではないので、この分野はわれわれがやらなくてはいけないと考えている。「クリニーク」は安全性と最も大切にしているが、同時に効果との両立にも力を入れている。鏡を見て効果を実感できるけど、肌に優しく炎症が起きていない。これを追求することでお客さまの期待に応えていきたい。