いま原宿が「“リアル”ガチ中華」の街と化しているワケ、中国企業の賢い日本進出戦略
「ガチ中華」とは、日本人向けに味を合わせず、本場の中華料理を出す飲食店のこと。近年のガチ中華人気によって日本人客も増えているが、元々は中国人の中国人による中国人のための料理だった。関東圏では、池袋、大久保、西川口といった大きな中国人コミュニティがある街に多い。原宿が「ガチ中華の街」になり始めていると言うと首をかしげる人が多いだろうが、このような飲食店が増えているのではなく、2022年ごろから中国系の小売・飲食チェーンが原宿に続々と出店を始めている。その背後には、中国企業のしたたかなビジネス戦略がある。 【詳細な図や写真】神宮前にある春水堂 表参道店は2014年にオープンした(写真:筆者撮影)
中国企業が続々出店、本当の意味で“ガチ中華”の街と化す原宿
ご承知のように、原宿は日本のポップカルチャーの発信地だ。そこに2014年という早い時期に出店をしたのが、台湾の春水堂(チュンスイタン)だ。 春水堂は、台湾台中市を拠点とする中国茶カフェで、タピオカミルクティーを発案したことで海外にも名前が知られるようになった。春水堂はその後も銀座、六本木、代官山という高級感のある地域に出店することで、日本でのブランドイメージを確立した。 それに続いて、台湾高雄市を拠点とする貢茶(ゴンチャ)が原宿に出店。この2つのチェーンが、日本での台湾スイーツブームを牽引していった。さらに、遅れて台湾のカジュアルなドリンクチェーン「Coco都可」(ココトカ)も原宿に出店。 ゴンチャは通行量の多いターミナル駅を中心に出店、Coco都可は下北沢や秋葉原といった若者が集まる街を中心に出店するという三者三様の戦略での展開を始めたが、共通しているのは日本人を顧客として考えていたことだ。 日本人のどの層をターゲットにするかで店舗展開の戦略が異なっているが、春水堂の「高級感」、ゴンチャの「通行量」、Coco都可の「若者」というそれぞれの戦略の重なる場所が原宿だった。残念ながら、コロナ禍でゴンチャとCoco都可は、原宿からは撤退をしてしまった。春水堂の表参道店は今でも健在だ。