習近平独裁政権の“悪手”が深刻…中国が「世界の覇権国」から遠ざかったといえるこれだけの理由【経済の専門家が解説】
7月18日まで共和党大会が開催された米国と、同じく7月18日まで三中全会が開かれた中国。世界情勢のカギを握る2国ですが、この日、「米中」の明暗がはっきり分かれたと、経済の専門家で株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏はいいます。米国好調の理由と中国不調の背景について、それぞれ詳しくみていきましょう。 【画像】「30年間、毎月1ドルずつ」積み立て投資をすると…
すでにトランプ当確か…経済好調、結束力高まる米国
米中対立が先鋭化し、世界情勢は楕円の2つの極、ワシントンと北京の2つの政治指導力を軸に展開し始めたように見える。2大国の政治イベントにおいては両国ともに対立関係を前提として政策論が打ち出された。 米国では7月18日まで共和党大会が開催され、直前の暗殺未遂から立ち上がったトランプ氏が熱狂的に次期大統領候補に選出された。 民主党内では老齢化を否定しがたく、公開討論で劣勢に立ったバイデン大統領の候補引き下げの動きが高まり、いまや「もしトラ」から「確トラ」になったと語られている。トランプ氏の最大のアジェンダはMAGA※だが、そのカギはアメリカの覇権に挑戦する中国を抑え込むことにある。 ※MAGA……「Make America Grate Again」の頭文字をとったもので、「アメリカを再び偉大な国に」の意。1980年の米国大統領選においてロナルド・レーガンが提唱し、ドナルド・トランプも2016年の大統領選以降繰り返し使用している。 受諾演説でトランプ氏はこれまでの民主党攻撃を封印し、米国民の団結を訴えた。トランプ氏は中国の最恵国待遇の取り消し、対中輸入関税60%等対中抑止を前面に出している。 このように選挙戦では現バイデン政権が劣勢であるのとは裏腹に、米国の経済は好調である。5%という乱暴とも思われる利上げにもかかわらずほぼ完全雇用が続き、株価は史上最高値を更新している。経済失速の気配があればただちに大幅な利下げが可能であり、政策選択肢に恵まれている。
一方、習近平独裁のもと“悪手連発”の中国
もう一方の世界覇権を伺っているスーパーパワー中国では、5年に1度の重要経済政策を決定する3中全会(第20期中央委員会第3回全体会議)が7月18日まで開催された。 国有企業を柱にする成長政策、米中対立先の激化の下で半導体など先端技術の国産化を加速すること、不動産・金融対策等が打ち出された。米欧などと一線を画す独自の発展モデル「中国式現代化」がうたわれたが具体性はなく、共産党主導の下での経済政策の限界を垣間見せた。 中国経済は米国とは異なり、困難が深刻化している。CPIはほぼ前年比0%、PPIは 2023年以降マイナスが続き、デフレに陥りつつある。 統計捏造か…“高すぎて辻褄があわない”実質GDP 国家統計局が7月15日に発表した4~6月期の実質GDPは前年比4.7%増と、1~3月期の5.3%から減速し、政府の年間目標5%を下回った。 しかしそれでも不動産販売額が1~5月累計で前年比28%減と収縮していること、消費指標である小売売上高が前年比2~3%増にとどまっていること等を考えると高すぎて辻褄があわない。 中国統計局は今回GDP発表に際して、恒例の記者会見を行わなかった。「不動産投資の破綻から人口減少まで多くの逆風に見舞われているにもかかわらず、中国はどうやって5%の成長を実現しているのか。実際の成長率は恐らくこれより低く、もしかすると大幅に低いだろう」とWSJは指摘している。 中国が壮大な統計捏造に手を染め始めたとすれば、誰も経済実態がわからなくなっていくかもしれない。