アラムコ、負債増でも世界最大の配当維持-サウジ政府財政支える
(ブルームバーグ): サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは、負債を増やしながらも、世界最大の310億ドル(約4兆7200億円)の配当を維持した。株式の過半数を持つ政府の財政にとって、配当は重要なためだ。
石油需要の見通しが暗い中で、同社が配当をいつまで維持できるかの試練は、四半期あたり約100億ドルに相当する特別項目が縮小し始める来年初頭に訪れそうだ。サウジアラビアの野心的な経済改革計画により、政府の財政赤字が拡大しているため、すでにアラムコは利益以上の配当を行っている。その結果、同社は7-9月期(第3四半期)決算で、2年ぶりに純負債残高がキャッシュ残高を上回るネット・デット・ポジションに陥った。
5日の発表によると、同社の純負債額は、第3四半期は89億ドルだった。前年同期のキャッシュ残高は274億ドル、6月末時点では23億ドルだった。営業活動によるキャッシュフローから資本支出を差し引いたフリーキャッシュフローは219億9000万ドルで、配当総額を下回った。純利益は、前年同期比15%減の276億ドルで、株主に帰属する調整後利益は、ブルームバーグがまとめたアナリスト予想を下回った。
原油価格が、サウジアラビアの支出バランスを保つのに必要な水準を大幅に下回って推移している中、アラムコの配当金は同国の予算にとって極めて重要だ。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、砂漠地帯に建設する未来都市プロジェクト「NEOM」など多額の事業を推進しているが、アラムコの化学プラント計画を含め、事業の一部は資金調達の問題から縮小されている。
5日のサウジアラビア株式市場で、アラムコの株価は一時0.7%下落した。同社の株は今年に入り17%下落しており、パフォーマンスは米エクソンモービルや英シェルといった石油大手を下回っている。
配当金のほか、サウジアラビア政府は今年、アラムコに圧力をかけて120億ドル以上の資金を株式の二次売り出しで調達させた。