「下町ロケット」題材にも 心臓病の子を“救う技術”【WBS】
池井戸潤さんの人気小説「下町ロケット」シリーズ。この小説の題材にもなった企業が開発した医療技術が製品化され、来月、発売されることが27日発表されました。子供の心臓病治療の手助けになるという技術は、一体どんな物なのでしょうか。 「本製品を一人でも多くの患者に届け、小児の医療、特に先天性疾患の小児の患者に貢献できるよう努力していく」(帝人メディカルテクノロジーの田中昭弘社長) 帝人は27日、大阪医科薬科大学など3者で共同開発した、先天性心疾患がある子供の手術で使う修復パッチを6月12日から全国の医療機関に向けて販売すると発表しました。 「こちらが先天性心疾患の方に使用するというパッチ『シンフォリウム』です。手に持ってみると非常に薄くて柔らかいです。よく見ると、細い糸で編まれているのが肉眼でもわかります」(田中瞳キャスター) シンフォリウムは、心臓にあいた穴をふさいだり、血管を広げたりする際に使用されます。これまでのパッチは、子供が成長するとサイズが合わなくなり、交換のために再手術が必要となっていましたが、シンフォリウムは「成長に伴って広がっていく。そういったところが製品のコンセプト」(帝人 インプランタブルメディカルデバイス開発部の藤永賢太郎部長)といいます。 シンフォリウムは体内で溶ける糸と溶けない糸でニット上に編まれ、術後およそ2年で糸が溶け、溶け残った糸が広がります。子供の成長とともにおよそ2倍まで伸びるため、再手術のリスクが低減するといいます。
この編み込み技術を開発したのが福井のニットメーカー「福井経編興業(ふくいたてあみこうぎょう)」です。その高い技術はラグビー日本代表のユニフォームに採用され、海外からも注目されています。今回はパッチを拡張するため、ニットに使われている経編(たてあみ)の技術を応用したといいます。 「苦節10年。今まではなんて時間がかかる案件なんだと思っていたが、皆さんのおかげで、ものすごく早くできたと自負している」(福井経編興業の髙木義秀社長) 実は福井経編興業こそが、小説「下町ロケット ガウディ計画」のモチーフの一つとなった企業です。小説では心臓手術に必要な人工弁を開発する福井の桜田経編という名称で登場しています。小説の謝辞にも福井経編興業の名前があります。 「小児用医療機器の開発はどの企業もマーケットが小さく参入したがらない」(田中キャスター) 「小さいマーケットとは思っていない。これを今続けることで、大人の心臓用など今の製品の延長線上でマーケットを倍にこちらから広げていく」(福井経編興業の髙木社長) 取材を担当した田中瞳キャスターは番組内で「開発に関わった大阪医科薬科大学の根本慎太郎教授にもお話を伺ったんですが、先天性心疾患は100人に1人と言います。生まれて間もない赤ちゃんを1日がかりで手術することになり、身体的な負担はもちろん親の経済的負担、精神的負担も計り知れません。にも関わらず、5~7年で再手術をするケースが少なくないということでした」 「これは小児医療において国内外問わず共通の課題で、シンフォリウムは当初から世界を視野に入れて作られたそうです。現在すでに問い合わせが来ていて、海外進出を進めているということです」と報告しました。 ※ワールドビジネスサテライト