登記をしないとどうなるのか?会社設立における「登記」の重要性【司法書士が解説】
「登記」は単なる事務手続きではありません。会社を設立する前に知るべき「登記の重要性」について、加陽麻里布氏(司法書士法人永田町事務所 代表)が解説します。
会社を設立すること=登記をすること
「登記」という言葉を聞くと、不動産登記や車の登録を連想する方も多いかもしれません。しかし、会社設立における登記とは、法務局に会社の基本情報を登録し、社会的にその存在を公示する手続きです。この手続きを経ることで、会社は法人格を取得し、法的な存在としての活動が可能になります。 具体的にいうと、会社は設立登記をしなければその会社は「法律上存在しない」状態です。たとえオフィスを借りて従業員を雇い、事業を開始していたとしても、登記がなければその組織は法律上「ただの個人や団体」とみなされます。つまり、設立登記は会社設立そのものといえるのです。
登記によって得られる「法人格」とは?
法人格とは、法律上の人格(法的人格)のことで、会社が権利義務の主体として扱われる権利を持つことを意味します。個人(自然人)が契約や資産の所有、裁判への関与といった権利を持つように、会社も登記を経て法人格を得ることで、以下の活動が可能になります。 ・契約の締結:会社名義で取引契約を結ぶ。 ・資産の所有:会社名義で土地や建物、設備を所有する。 ・銀行口座の開設:法人名義の口座を持つことで、資金管理がスムーズになる。 ・社会的信用の獲得:登記された会社は公的に認められるため、取引先や金融機関からの信頼が得やすくなる。 この法人格は、登記を行わなければ得ることができません。
登記は会社の「誕生日」
法務局に設立登記申請をした日が、その会社の「誕生日」となります。この日付は、会社が法的に誕生し、活動を開始できる日として記録されます。たとえば、設立準備段階で会社名や事業内容を決定していても、登記申請が完了するまでは法律上の「会社」とは認められません。設立登記をして初めて、会社は世の中にその存在を知らしめることができるのです。 では、会社設立のための登記手続きはどのように進めるのでしょうか? 一般的な流れをまとめました。 〈登記手続きの流れ〉 (1)基本事項の決定 ・会社名(商号)、本店所在地、事業目的、資本金、役員構成などを決定。 ・この段階で、会社のルールブックとも言える「定款(ていかん)」を作成します。 (2)定款の認証 ・株式会社の場合、定款は公証役場で認証を受ける必要があります。この認証を受けた定款は、登記に必要な重要書類となります(合同会社の場合は定款認証手続は不要です)。 (3)資本金の払込み ・発起人が設立時に資本金を銀行口座に払い込み、銀行口座の写しなどの払込証憑を用意します。 (4)登記申請書類の作成 ・定款や資本金の払込証明書、役員の就任承諾書など、必要書類を揃えて法務局に提出します。 (5)登記申請 ・書類を法務局に提出し、審査が完了すれば登記が完了します。これをもって会社が正式に誕生します。