【神宮大会】横浜・村田浩明監督が東洋大姫路戦で内野5人シフトを決断できた理由
「アウトの仕方はたくさんある」
なぜ、村田監督は内野5人を決断できたか。 「選手は勝負している。自分も勝負しないと。負けたら自分の責任なので。数々の負けを経験してきたので、割り切ることも大事です」 さらには、2つの背景があった。まずは、横浜高伝統のスキのない野球の継承である。2020年4月から指揮する村田監督は言う。 「私の恩師である渡辺(元智)監督、小倉(清一郎)部長から学んできました。良いことは残す。変えていくところは、変えていく。シフトは相手打者、状況にもよるチームの力量など、見てできることで、すべての手を打っています。今日に限って言えば、長打は仕方ない、と。後ろに下げて、ポテンヒットだけは避けたかったので……。(シフトに)答えはないです。全員野球、総力戦です」 そして、こう続ける。 「横浜高校は守りからのリズムを大切にしています。守れない選手は使いたくない。打つよりも、守りのほうがミスを防げる。やれることをやり、アウトにする。アウトの仕方はたくさんあります。(ボールを)持っていない選手がどれだけ(プレーに)入っていけるか。バスケットボールをよく見に行くんですが『バスケ野球だ』と言っています」 準優勝だった2007年以来の決勝進出。平成の怪物・松坂大輔(元西武ほか)を擁した1997年以来の優勝まで、あと1勝である。レジェンド・松坂は、今でも横浜高のシンボルだ。後輩にあたる村田監督も背筋を伸ばす。 「松坂さん? 皆、あこがれています。ただ、私たちは今回、そこではなくて、勝ち続けたい。完全優勝しよう、と。(今秋の新チーム結成から)15連勝。そこしか見えていない。(今日は)あくでも14勝目。たくさん成長させていただいて、その先に優勝があると思っています。『横浜1強』と決めている。(出場が有力視される来春の)センバツもそう、春の県大会、関東大会、夏の県大会と続いていきますので、納得したらそこで終わりです。我々は成長し続けるしかない。すごい舞台で、この多くの観衆の中で、素晴らしい相手と試合をさせていただき、成長しないわけがない」 目の前の1プレーに執着し、勝利を追求する。「一戦必勝」。どの学校も使うフレーズだが、横浜高には勝負に向かうまでの確固たる裏付けと、実際にプレーする高い精度がある。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール