王者ネリの減量失敗の失態は山中慎介との世界再戦にどんな影響を及ぼすのか
今日3月1日、両国国技館で行われるWBC世界バンタム級タイトルマッチの前日計量が28日、九段下のホテルで行われ、挑戦者の山中慎介(35、帝拳)はリミットの53.5キロを一発でクリアしたが、王者のルイス・ネリ(23、メキシコ)は、なんとリミットの2.3キロオーバー。再計量まで2時間の猶予を与えられ、ランニングや縄跳びなどで再計量を試みたが1キロしか落とせず1.3キロオーバーで失格となった。 試合は予定通りに行われるが、WBCの規約でネリは王座を剥奪され、山中が勝った場合は新王者となり、山中が敗れた場合、引き分けの場合は空位となる。 王者の減量失敗は、このタイトル戦にどんな影響を及ぼすのか。 この日、計量を取材していた元WBA世界Sフライ級王者の飯田覚士氏は、「減量失敗の原因と、その理由によって影響の度合いは変わるでしょう。確信犯なのか、それともミスなのか、落とせなかったのか。それによって失敗した選手のリングへ上がるモチベーションも変わってきます。厄介なのは、確信犯。階級が実質、ひとつ上の相手と戦うことになり、減量による消耗がないわけですから大きなハンディとなります。今回、ネリがどの部類の失敗に入るかはわかりませんが、暗い表情が気になります」と危惧する。 確信犯か、落とせなかったミスか。 確認犯の場合も、「落として体調を崩して負けるくらいなら落とさず勝ちたい」という確信犯と、なんらかの理由でモチベーションを失くして落とさなかった場合がある。 過去の例を見ても減量に失敗した王者が負けたケース、勝ったケースと様々だ。 2006年にWBC世界L・フライ級暫定王者、ワンディ・シンワンチャー(タイ)に、嘉陽宗嗣(白井・具志堅)が挑戦した暫定世界戦も、発熱の影響で減量のできなかったワンディが、リミットを1.2kgもオーバーして失格。試合は敢行されたが、嘉陽が途中、倒されるなどして0-3の判定で完敗。また、現在、大橋ジムのトレーナーである松本好二氏も、1998年にフレディ・ノーウッド(米国)の持つWBA世界フェザー級タイトルに挑戦したが、ノーウッドが、800グラムオーバーで計量に失敗して失格。王座を剥奪されて試合が行われたが、減量を途中でやめたノーウッドは元気になって“リトルハグラー”と呼ばれるほどの強烈なパンチをブンブン振り回して松本氏は10回にTKO負けしている。 以前、松本氏に、この試合についての話を聞いたことがあるが、ノーウッドは、「無理して減量して負けるよりもタイトルを失っても自分のキャリアに負けをつけないため開き直ってオーバーした」という確信犯だったという。 減量失格となっても、試合停止などのペナルティが長期にわたることはなく、試合に勝てば、階級を上げてすぐ世界ランキング入りする可能性もあり、こうした確信犯は、今、現在も後を断たない。罰金、或いはファイトマネーの減額もなされるが、多い場合でも50パーセント程度。興行主側がテレビ放映やチケット販売を終えている関係で“試合を中止できない”という弱みもあり減量失格のボクサーをリングに上げるための最低限の配慮もなされる。