王者ネリの減量失敗の失態は山中慎介との世界再戦にどんな影響を及ぼすのか
山中は、この再戦に“最後”という言葉を使っていた。勝っても負けても、この試合を最後にする決意に思えた。それほどの執念で再起を決めた相手がプロ失格の愚行を犯したのである。山中の緊張の糸が切れ、モチベーションが低下、集中力を失うことが心配になる。 だが、前出の飯田氏は、「あの山中選手の目を見たとき、大丈夫だと思いました。山中選手は、再び世界王者になるためではなく、ネリへの借りを返すために復帰を決めたのでしょう。そのエネルギーが増すだけでモチベーションにマイナス要素はないと考えます」という見方をしている。 前戦では、山中は“神の左”の打ち終わりに合わせてくるネリの右にやられた。 「早すぎたタオル投入問題」もあった。今回、山中が、そのネリの戦術にどう対応するかが焦点だったのだが……様々な不確定な要素が絡み合い勝負の行方が見えなくなってきた。 ただジャーナリズムを逸脱して個人的な意見を書かせてもらうならば、山中には減量失敗という挑戦者の尊厳を踏みにじり、ボクシングを冒涜する失態を犯したネリに対するメッセージをKO勝利という形で示して欲しいのである。ボクシングの尊さを証明するためにーー。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)