小池知事が陳謝、都民との約束「無害化」 豊洲移転の課題に
「皆さまとの約束を現時点でも守れていないことについて、あらためて都知事としてお詫び申し上げたい」。豊洲市場への築地市場の移転問題をめぐり、東京都の小池百合子知事が17日に築地市場関係者に陳謝した。小池知事の市場移転判断が注目される中で、豊洲市場の汚染を環境基準以下にする「無害化」という言葉がクローズアップされている。都と都議会が都民と約束した豊洲市場の「無害化」。この方針が豊洲市場に移転する場合の課題になっている。
「付帯決議」と「無害化3条件」
都によると、「無害化」という言葉が初めて登場するのは、2010年3月の都議会で可決された中央卸売市場予算案の付帯決議。同決議には、豊洲市場について「無害化された安全な状態での開場を可能とすること」と記されている。当時の石原慎太郎知事も「付帯決議につきましては十分に尊重させていただき、今後の都政運営に万全を期してまいりたい」と述べている。 ここでいう「無害化」とはどんな定義なのか。2011年3月の都議会で当時の岡田至中央卸売市場長は次のように説明している。「技術会議により有効性が確認された(盛り土などの)土壌汚染対策を確実に行うことで、操業に由来いたします汚染物質がすべて除去、浄化され、土壌はもちろん、地下水中の汚染も環境基準以下になることであると考えてございます」。いわゆる「無害化3条件」だ。 「無害化」というハードルは、都と都議会により設定された形になった。 豊洲市場の用地はもともと東京ガスの工場があった場所であり、ベンゼンなどの有害物質による土壌汚染が残っていた。東京ガスによる土壌汚染対策が行われた後の2008年にも、土壌から環境基準の4万3000倍という高濃度のベンゼン、同860倍のシアン化合物が検出された。 豊洲市場用地は、汚染土壌こそ存在するが健康被害の恐れがない「形質変更時要届出区域」に指定されており、現在では土壌汚染対策法上、安全とされる。都や都議会は、その上で都民や市場関係者からの「安心・安全」への信頼を得るために、法の定めを超える「無害化」を掲げた格好だ。環境対策の専門家も「汚染物質のある工場跡地なので、市場移転に向けては徹底的な対策を行う姿勢を示す必要があった」と理解を示す。