大崎・五反田地区再開発事業にみる街の「リブランディング術」とは
JR大崎駅の東側に位置し、三井不動産などが開発を進めてきた「パークシティ大崎」(品川区北品川)がほぼ完成し、このほど完成披露説明会が行われた。大崎・五反田地区の再開発の中でも面積約3・6ヘクタールと最大規模となる部分が完工したことで、大崎副都心開発が最終仕上げの段階を迎えることになった。
「都市の再開発」と聞くと、古くからあるくたびれた街に新しい建物を建設することで一気に雰囲気を変えてしまうという都市計画のイメージを持つ人も多いだろう。現在、都内でもいくつかそうしたところがあるが、じっくりと時間をかけて地域住民の理解を得ながら進めてきたケースの先駆けがこの大崎再開発である。山手線内でも最大規模の「リブランディング」は約30年の時間をかけ、街に大きな変化をもたらした。 大崎といえば、かつては隣接する大田区と同様に、町工場が立ち並び、機械油のにおいがただよってくるような場所だった。山手線の中でもマイナーな駅の代表だったが、東京都が1982年に副都心として認定して開発に着手。1989年に大崎ニューシティが竣工して以降、99年にゲートシティ大崎、2001年にオーバルコート大崎と次々に整備が進んだ。 「パークシティ大崎」は東五反田地区における最大規模の街区で、「緑のネットワークでつながる街づくり」をコンセプトに掲げた。道路の拡幅により、緑豊かな歩行空間を確保したほか、多様性のある植栽で、「歩いて楽しい」沿道の景観を作り出した。業務ビル、住居ビル、地域交流施設、事務所・工場を集約した作業所棟など多くの機能をバランスよく配置したことも特徴だ。 さらに新設された「大崎ブライトコアホール」内に、品川区の産業支援交流施設「SHIP」 (シップ)を設けて、ベンチャー企業の育成を支援するなど、伝統ある工業生産拠点としての役割も継承している。
大崎再開発に重要な役割を果たしているのが各種交通の便の良さである。近い将来、リニア中央新幹線の発着起点となる隣の品川駅へのアクセスの良さは大きな強みだ。既存の東海道新幹線、羽田空港、東京駅、新宿駅方面へのアクセスも利便性が高く、新たなビジネス拠点として重要度が一段と増すのは間違いない。 さらに、各種建物や商業施設などが調和して統一感のあるイメージを提供していることも特徴だ。色は「アースカラー」を基調とし、建物の低層部の形状は、隣接する街区の建物とデザインを統一して町並みに一体的な表情が出るように配慮している。 大崎・五反田地区の再開発は東京が進める現在の街づくりの先駆けとして取り組んできただけに、30年の歩みと成果は都市の「リブランディング」という観点から、他のロールモデル(手本)となる事例である。9月11日のグランドオープンに向け、今後、順次店舗が開店するなど、最終的な詰めの作業が行われる。 (3Nアソシエイツ)