センバツ高校野球 青森山田、劇的勝利 土壇場でサヨナラ /青森
第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)は大会第4日の21日、青森山田(青森)が昨秋近畿ベスト4の京都国際(京都)と対戦、4―3でサヨナラ勝ちを収めた。八回に同点に追いつかれたが、九回1死三塁から伊藤英司が適時打を放ち、劇的な幕切れとなった。2005年の初出場以来、3度目の出場で念願のセンバツ初勝利。青森からの応援団が詰めかけた三塁側スタンドは大いに湧いた。青森山田は2回戦は大会第8日の25日、第1試合で広陵(広島)と対戦する。【江沢雄志、早川健人】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 「ついにやった」。長い冬を越えた春の初勝利はサヨナラ勝ちの劇的な展開となり、三塁側アルプス席には大きな歓声が響いた。8日に関西入りしてから行った練習試合は8戦全勝。勢いそのままに息詰まる接戦を見事ものにした。 試合は一回裏から動いた。2死二塁で打席に立った四番・原田純希が右前に適時打を放ち、先制。さらに後続の吉川勇大、伊藤英司が安打を重ね、2点を先取した。 原田の母、里美さん(49)は「本人よりもこっちが緊張していたから、いいところで打ててほっとした」と笑顔を見せた。 四回には内野安打で1点を返されたが、五回には下位打線からチャンスを作り、佐藤隆樹の適時打で再び2点差に戻した。 先発のエース・関浩一郎は打たせて取る投球で、七回まで1失点で粘りの投球を見せた。相手に流れを奪われそうな場面では、バックが再三の好捕で援護。スタンドはそのたびに総立ちとなり、「おおー」と感嘆の声が響いた。 八回には守備の乱れなどで2点を失い、同点に。それでも関は後続を打ち取ってピンチを切り抜け、九回表に登板した桜田朔も無失点に抑えた。 そして迎えた九回裏。1死から吉川が木製バットで打ち返した打球は中越えの三塁打に。押せ押せムードに沸く中、続く打席に立った伊藤は初球を左前に運び、吉川を本塁に還して試合を決めた。「自分たちで新しい歴史を作ろう」と話し合った通り、念願だった春の初白星を手中に収めた。 春の甲子園に初めて流れた校歌。OBでもある対馬竜之介コーチは「みんなの思いが重圧となる中で、よく頑張ってくれた」と選手たちを手放しでたたえた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇好捕でチームに流れ 青森山田 菊池伊真(いっしん)内野手(2年) 「負けてもおかしくなかった」と振り返る夢舞台での接戦で躍動した。青森山田中では中学年代の日本選手権2連覇を中心選手として経験。主将の橋場公祐も「野球に熱心でとにかく負けん気が強い」と信頼を寄せる気持ちの強さで、守備でリズムを作って攻撃につなげる青森山田の野球を体現した。 けがが相次いだ昨秋は思うような打撃ができず、打率は1割台に落ち込んだ。年明けからはウエートトレーニングを中心に、体作りに重きを置いてきた。 ここまで決して本調子とは言えなかったが、「甲子園では自分が活躍して、チームに恩返ししたい」と臨んだ初戦。再三の好捕でチームを盛り上げ、試合の流れを作った。 中学3年の時に召集されたU15(15歳以下)日本代表で寝食を共にした仲間とは、今もこまめに連絡を取る。健大高崎(群馬)のエース、佐藤龍月もその一人。大会前には「甲子園で勝負しよう」と約束し合った仲だ。佐藤は19日の初戦で、学法石川(福島)を相手に七回無失点の好投。大いに刺激を受けた。試合後、少しほっとした様子を見せながらも「守備も打撃もまだできる。結果を求めていきたい」。次の試合に向けて意欲は十分だ。【江沢雄志】