ウクライナで戦死した台湾人義勇兵の思い㊤ 子供3人の父親、「自由と民主を守りたい」と戦地に
ロシアによるウクライナ侵略開始後、8千キロ離れた台湾から15人前後が義勇兵としてウクライナ側に参戦し、前線で2人の死亡が確認された。台湾とウクライナには近隣の覇権主義国による併呑の脅威という共通点がある。なぜ死地にあえて赴いたのか。2人の「思い」を戦友や知人たちの証言からたどった。 【写真】台湾人義勇兵のもう一人の戦死者である曽聖光氏 ■「父は民主主義に貢献した」 13歳長女が見せた涙 台湾南部・高雄出身の呉忠達さん=享年(44)=は中高生3人の父親だった。台湾陸軍を退役後、ウクライナに渡って外国人部隊「領土防衛国際軍団(ILDU)」の兵士となり、10月末、東部ドネツク州での戦闘で死亡した。 「私の父が民主主義と自由のために貢献したことを皆さんに理解して頂き、とてもありがたいです。父の優しい笑顔と穏やかな声が今も…」。遺族代表として気丈にあいさつした長女(13)が、思わず声をつまらせた。11月30日、高雄市のプロテスタント系「正忠基督長老教会」で開かれた、呉さんをしのぶ会。会場には戦場で猫3匹を抱えてほほ笑む呉さんの写真パネルが飾られていた。 会を企画した林偉聯牧師は「われわれは他国の戦争に参加することを奨励はしない。しかし彼はウクライナにたつ前、『台湾のために(渡航を)準備している』と語っていた。こうした義挙は記念されるべきだ」と話す。 「台湾はウクライナの戦争と直接関係はない。しかし強大な隣国に併呑されようとしている点で非常に似ている」。別の牧師も壇上で呉さんを「勇士だ」とたたえた。高雄在住のウクライナ出身者たちが登壇し、謝辞を述べた。「彼はわれわれの自由のために命を犠牲にした。ウクライナの歴史と私たちの心にとどまり続けるでしょう」 ■露軍の迫撃砲直撃 遺体回収できず ロシアが侵略に成功すれば、台湾統一を掲げる中国の習近平政権が武力行使への自信を深めるのは確実だ。 ただ、台湾人義勇兵をたたえる声は、必ずしも台湾世論の多数派とはいえない。 「多くの市民は無関心で、高給を得るための傭兵だと考えている。しかしそれは間違いだ」。呉さんの死を目の当たりにした戦友の潘文揚さん(25)はそう語る。