バイオ企業を製薬大手に売却、資産20億ドルのハーバード大教授
慈善活動にも熱心
スプリンガーは、モーフィックとモデルナ以外にも、RNA細胞治療を手掛けるカルテジアン・セラピューティクス、治療用タンパク質と抗体を開発するテクトニック・セラピューティック、重篤な疾患の治療法を開発するスカラー・ロックなどの上場企業3社の設立に関わったり、初期投資家となったりしている。また、インテグリンに関する研究により、2022年に権威あるアルバート・ラスカー基礎医学研究賞を他の2人の科学者と共同受賞している。 「スカラー・ロックとモーフィックについては、私が創業者であり、科学者として両社のビジネスコンセプトを思いついた。私の哲学は、自分が知見のある分野に投資することであり、私は根っからの科学者だ。私は投資家であると同時に、非常に厳格な科学者でもある」と、スプリンガーは2020年に語っていた。 スプリンガーは今年、モーフィック以外にも投資で大きなリターンを上げている。彼が2019年に共同設立したテクトニック・セラピューティックが上場企業であるアブロバイオと6月に合併し、さらに第三者割当増資で1億3100万ドル(約193億円)を調達した。スプリンガーは2022年6月に約1900万ドル(約28億円)をテクトニックに出資し、さらに合併の一環として1月に4200万ドル(約61億円)を追加投資している。 スプリンガーが最初にモデルナに出資したのは2010年のことで、このときの投資額は約500万ドル(約7億3000万円)だった。フォーブスの推定によると、彼の持ち株比率は約3%で、現在約14億ドル(約2200億円)の価値がある。彼は、慈善活動にも熱心で、2017年にはタンパク質科学の研究に特化した非営利団体のInstitute for Protein Innovation(IPI)を設立し、これまでに少なくとも2億5000万ドル(約368億円)を寄付している。 「私は投資だけでなく、慈善活動も積極的に行っている。IPIを設立した目的は、世界中の科学者が生物学的発見に使用できる信頼性の高い抗体の開発を支援することだけでなく、より多くの発見を可能にする新しい技術を開発するためでもある」と彼は2020年に語っていた。
Giacomo Tognini