静学ドリブラーがピッチにもたらした波及効果 「あえて」のワンプレーが生む独自スタイル
シンプルな展開から追加点も「やっぱり自分たちのスタイルで」
そして後半25分にはオフ・ザ・ボールの動きで相手の逆を取った湯澤の背後にボールが出て、ここではシンプルなワンタッチクロスを選択した湯澤のボールを受けたFW乾皓洋がボールを1つ止めて相手GKの体勢が崩れるのを見極めて決めた。乾が見せた最後の一工夫はゴールを確実に決める素晴らしいプレーになったが、それまでの展開はこの試合で作った決定機の中でもかなりシンプルなものだった。 川口監督も「点を取る時は本当にシンプルで、ダイレクトで打ったりワンタッチパスが入ったりというのが、比較的そっちの方が入りやすい」としつつ「だけど、なんですよね」と言葉を区切る。「やっぱり自分たちのスタイルで、ボックス内でのプレッシャー、ブロックを剥がして取るのもウチのスタイルでもあるんです。乾も前半3本外していましたけど、そこは頭を整理してやれたのかなと思います」と振り返った。 最後方からドリブルで持ち上がるようなプレーも出るようになっていったが、岩田は「静学はどのポジションでもドリブルができないとレギュラーにはなれない。後ろから蹴るのをあまり好むサッカーではないので、そこにはほかと違ってすごい魅力があって、後ろからドリブルで剥がしに行くのはほかにないものだと思う。(前線では)エゴが出るというか、自分の良さを出すためにドリブルでいくのは悪いことではないと思うし、チャレンジしてのミスだったら構わない」と、チーム全体にある“イズム”を明かしている。 高い技術をベースに、相手を見て、逆を取って仕掛けていく。31日の2回戦で対戦する高知(高知)は、徹底したロングスロー戦略とショートカウンターを見せながら初戦を勝ち抜いてきた。それでも川口監督は「(高円宮杯)プレミアやインターハイでもものすごく投げられたので多少の免疫はありますからね。自信を持って守りたい」と話す。勝敗の行方は別にして対極的なスタイルの両者の対決になりそうだが、だからこそ「あえて」の1プレーを入れる静岡学園のスタイルが際立つ展開にもなりそうだ。
轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada