サッカー天皇杯が新型コロナ対策で方式変更…J1勢参戦を4回戦からにしてJリーグ再開日程調整をサポート
Jリーグが発足した1993年以降の天皇杯を振り返れば、1回戦から登場していたJ1勢は1996年に3回戦から、2004年には4回戦から登場する形で変遷。参加チームが現行の88となった2009年の第89回大会に2回戦からの登場に改められ、ACL出場勢など一部クラブが4回戦からの登場としてシードされた、2015年および2016年大会を除いて前回大会まで継続されてきた。 J1勢にとっては形の上では2004年大会から2008年大会までの方式に戻ったことになるが、それでも2回戦および3回戦をシードされるメリットは大きい。現時点でリーグ戦5試合、ルヴァンカップ2試合が延期されているなかで、代替開催できる日が極めて限られていたからだ。 Jリーグは再開目標を4月3日に設定していて、村井満チェアマンは「これであれば予定通りの日程を消化できる、と想定している」と語る。過密日程を承知の上で、平日水曜日のナイトゲームに延期分を組み込んでいく形になるが、それでも東京五輪による中断前で利用できる水曜日は限られていた。 天皇杯の変更前では4月15日、5月20日、6月24日ぐらいだけだっただけに、天皇杯2回戦の6月10日と同3回戦の7月8日が空くことは大きい。7月8日は東京五輪へ向けた中断期間に入っているが、Jリーグはサッカー競技が始まる7月22日の直前までを代替日にあてる構想も描いている。 具体的には7月8日、11日、15日、18日あたりが考えられ、これらを当てはめていけば東京五輪前で延期分を消化できる。村井チェアマンはJFA副会長も兼任するだけに、進められていた天皇杯の大会方式変更を把握していたと考えれば、前出の「これであれば――」発言も合点がいく。
東京五輪が閉幕した後も、例えば9月16日、23日、30日、10月21日、28日と水曜日は現時点で空いている。しかし、村井チェアマンのもとで立ち上げられた、再開へ向けた4つのプロジェクトのなかで、試合日程を調整するチームのリーダーを務める黒田卓志フットボール本部長は「何かが起こった場合、その予備日がなくなってしまう」と後半戦に延期分をあてるリスクをこう説明する。 「通常のシーズンでも7月ぐらいから例えばゲリラ雷雨であるとか、あるいは8月や9月以降は台風などのリスクも考えながら、平日に予備日を設けています。なので、延期された前半戦の試合が後半戦にずれ込んでくると、スケジュールがかなりカツカツの状態になってくるので」 追加された天皇杯5回戦が行われる10月14日も水曜日だ。ゆえにシーズン全体をにらんだリスクマネジメントを徹底する意味でも、東京五輪前に可能な限り延期分を消化したい構想があるのだろう。必然的に過密日程となる状況を踏まえて、村井チェアマンはJ3までを含めた約1500人のJリーガー全員へ送るビデオメッセージのなかに、こんな言葉を入れ込むと明かしている。 「再開されたとしても土曜日、水曜日、土曜日と例年にない過密日程になることが想定されるので、ここでしっかりと身体を作っておいて下さい――」 天皇杯の序盤戦は地方で行われるケースが多く、J1勢が出場する場合は入場料収入も含めて、主管となる地方のサッカー協会の貴重な財源となる。J3以下のクラブにとってはJ1との真っ向勝負や、ジャイアントキリングを達成できる機会が少なくなるが、天皇杯の醍醐味以上に今回だけはサッカー界全体が団結して、直面している未曾有の事態を乗り越えていく姿勢が示されたことになる。 大会方式変更の正式決定および第100回大会の組み合わせ抽選は、18日の天皇杯実行委員会で行われる。延期論がかまびすしくなってきた東京五輪が予定通り開催されると踏まえ、その上で新たな目標として掲げた4月3日の再開をみすえながら、日本サッカー界を挙げて最善の準備を進めていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)