「秋元康をここに連れてこい」…「ドン・キホーテ秋葉原店8階」が「AKB48劇場」になるまでの舞台裏 元AKB48劇場支配人が語る
2005年、秋元康氏のプロデュースにより「会いに行けるアイドル」をコンセプトとして誕生したAKB48。大規模な握手会、選抜総選挙など画期的な手法で一時代を築いたこの国民的アイドルグループの黎明期から最前線で戦い続けた男がいた。元AKB48劇場支配人・戸賀崎智信氏が初めて明かす、激動と奮闘の記録。 【画像】当時、ナンバーワン嬢だった女性とキャバクラのボーイ時代の戸賀崎氏 ショーキャバクラで10年間勤めた戸賀崎氏はその後、秋元康氏が構想したプロジェクトの加わることになる。
難航する物件探し
秋元康先生と秋葉原でショークラブを始める――。 そんな電話が芝(幸太郎 ※当時オフィスフォーティエイト社長)くんからあった翌日、僕は早速、秋葉原で物件探しに取り掛かった。とはいえ、劇場にふさわしい物件など探したことがない。そこでショーキャバクラ時代の後輩で、当時不動産会社で働いていた小林くんにいろいろ手伝ってもらった。 しかし、これが思った以上に難航する。秋葉原にはオフィスビルこそ多いが、ステージと客席を設けられるほどの広いスペースがあり、なおかつ大音量のライブが許される物件というのは皆無に等しかったのだ。 そんななか、ようやく求める条件をすべて満たしてくれそうな空き物件を昭和通り沿いに見つける。オフィスビルの1フロアで、広さも申し分ない。入口につながる専用階段があるのもポイントが高かった。 そして後日、上野に事務所を構えるオーナーに会いに行くことになった。「契約書にサインをしてすぐに終わりだろう」。そう見込んでいた僕だったが、応接室に通されてすぐ、その考えがいかに甘かったかを思い知らされる。
「秋葉原には地熱がある」
「で、その秋葉原48ってなんなの?」 オーナーは怪訝そうな眼差しを僕に向けてきた。部屋の空気がやたらと重い。和やかな話し合いが期待できそうにないのは確かだった。 ただ、オーナーの不安も理解できる。なんだかうさんくさそうな男がやってきて、劇場を作ってアイドルを育成したいと言っているのだ。これまでそんなシステムはなかったわけだし、すんなり信用できるはずがない。新手の怪しいキャバクラだと思われていたとしても、まったく不思議ではなかった。 僕は劇場の仕組みや今後のプランを熱心に説明した。しかしオーナーの表情はいっこうに和らがない。それどころか、僕の話を遮って、こう言い放った。 「もうなんでもいいから、秋元康をここに連れてきてよ。本人が契約の場に来たら貸してあげるから」 結局、このオーナーとは最後まで折り合いがつかず、せっかく見つけた貴重な物件は契約することが叶わなかった。こうして物件探しは振り出しに戻ってしまった。 そもそも、なぜ秋元先生は秋葉原という土地を選んだのか。何度か同席させてもらったメディアからの取材の場で、「いま盛り上がっている秋葉原には地熱がある」と秋元先生が語っていたのをよく覚えている。 この時期、映画『電車男』の大ヒットの影響で、秋葉原は大きな注目を浴びていた。エルメスという美しい女性に恋したひとりのオタクの物語は、間違いなく秋葉原という街の大衆化に貢献したと言っていい。加えて、秋葉原駅周辺の再開発が盛り上がっていたのもこの頃だ。 ただ、僕は物件探しで街を巡りながら、すこしだけ不安も感じ始めていた。 確かに、秋葉原にはオタクと言われる人が大勢いた。しかし彼らが熱中していたのは、アイドルなどの生身の人間ではなく、どちらかといえばパソコンのパーツや電化製品、フィギュアだったのだ。その後一大ブームとなるメイド喫茶もちらほら見かける程度だったし、グラビアアイドルのイベントにも20~30人くらいしか集まっていなかった。 ただ、すでに秋葉原を拠点にすることは決定事項であり、いまさら引き返すことなどできない。 いま振り返ると、この頃のアイドルの聖地といえば、秋葉原ではなく、中野ブロードウェイや、Live inn MAGIC(現Honey Burst)というライブ会場がある四ツ谷だったようだ。僕たちのプロジェクトを知った業界人からも「秋葉原は別にアイドルの街じゃないから」と何度も鼻で笑われた。 ところが、物件探しを始めてから1ヶ月が過ぎた頃、事態は急展開を見せる。
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