【西武投手王国への道】才能の芽が次々と開花する土壌「若い子たちが自信を持つというのはこういうことなんだなと」(豊田コーチ)
【埼玉西武ライオンズ 投手王国への道】 5年ぶりの優勝を狙う西武の最大のストロングポイントである投手陣。近年、急速に力をつけてきたが、その裏には一体、何が隠されているのか。ライオンズ投手王国への道を追う――。 取材・文=中島大輔 写真=川口洋邦 【選手データ】豊田清 プロフィール・通算成績
リーグ最低から一歩ずつ改善
0、2、4、1、0、2。 先発ローテーションが一回りした開幕2カード目まで、西武の試合ごとの失点数を並べたものだ。「野球は点を与えなければ負けない」と言われるが、いずれも2連勝のあとに1敗と好発進。松井稼頭央監督は4月4日のオリックス戦(ベルーナ)のあと、投手陣への手応えを明かした。 「まだ始まったばかりですけど、ピッチャーを軸に戦っていきたいと思います。それだけの投手陣がそろっていると思いますので、何とか1点でも少なく、1点でも多く取って勝ち切れるようにやっていきたい」 初の開幕投手を務めた今井達也が豊田清投手コーチから「100点満点」をつけられるほど支配的な投球を見せれば、昨秋侍ジャパンに選ばれた大卒3年目左腕・隅田知一郎は粘り強い投球で白星発進。4月2日のオリックス戦(ベルーナ)で平良海馬が真ん中高めの速球を有効に使う最新トレンドで勝利した翌日、3球団競合のドラフト1位・武内夏暉は7回被安打1、無失点の鮮烈デビューを飾った。
先発陣だけではない。昨季ヤンキースで45試合に登板した剛腕アルバート・アブレイユが9回を任され、8回はソフトバンクから加入した速球派・甲斐野央が担い、7回は本田圭佑が速球とチェンジアップの緩急で打ち取る。2022年新人王の水上由伸や最速155キロ左腕の佐藤隼輔、20年最多セーブの増田達至も控え、6回から継投で逃げ切れる陣容だ。 「3、4年前を思い返してごらん? 『この目標は絶対に無理だよね』っていうところから来ているので」 開幕前、豊田コーチがそう話していた。3年前の21年、西武はリーグ最低のチーム防御率3.94だった。当時ブルペン担当だった豊田コーチは翌年からベンチで投手起用を主に任されるとまずは「手の届く目標」として同3.50を掲げた。そこから一歩ずつ改善してきたのだ。 「全員が平良や高橋光成みたいな投手陣だったら、もっと高い目標を立てる。だけど、これから世代交代もする中で彼らよりマイナス要素もある投手も起用していく。そう踏まえると、去年と同じくらいできたら投手王国再建に手がかかるかな。それが課せられた使命だと思うので」 昨年、西武はリーグ2位の防御率2.93を記録。22年の同2.75より下がったが、上々の数字だ。